不動産投資における利回りと担保評価の考え方ついて解説

不動産投資とは一言で片付けられるものではないことはお分かりいただけていると思います。ただ、一度考えていただきたいことがあります。

「あなたは、どうして不動産投資をするのでしょうか?」

投資家によって不動産投資をする目的や重視するポイントは変わってきます。単に不動産投資と言っても様々な目的がありますので、今回は不動産投資の目的を投資家目線でご紹介していきます。

利回りを重視するという考え方

最初は、不動産投資に必ず出てくるキーワード『利回り』です。

全ての投資家が規模の大小を問わずこの『利回り』のチェックは怠りません。『利回り』の確認によって、その不動産の収益性を確認することができます。

表面上の利回りには惑わされない

『利回り』にはいくつかの考え方が存在します。あなたが不動産情報を目にするときに表示されている『利回り』は表面のもの、つまり表向きの利回りです。

これは、その不動産のポテンシャルと言い換えることもできると思います。

つまり、その物件に対して今の家賃で満室稼働した場合の『利回り』を表していますので、空室が発生したり、賃料改定で下がった場合に関してはその『利回り』は低下することになります。

不動産投資の初心者や知識が浅い人が陥りやすい罠ですが、表向きの『利回り』を鵜呑みにして、実際の稼働状況や市場ニーズ、賃料の相場観などの確認を疎かにしてしまいがちです。

そして、実際に購入して運用したら想定よりも利益が出なかった、という事態に陥ります。

実際の利回りは何%ですか?

表面利回りだけに気を取られてしまい、実際の利回りを気にしていない方は危険な兆候です。

不動産投資には、家賃収入から金融期間への返済(元金と利息)、賃貸管理会社への管理費、備品、修繕費、火災保険料、固定資産税、所得税などを支払います。こらら固定費を支払った後に残った金額が『実際の利回り』ということになるのです。

実際に不動産投資をされている方なら共感いただけると思いますが、『表面利回り』と『実利回り』には大きな乖離が存在します。

不動産投資の世界では、『表面利回り』は机上の空論でしかあらず『実利回り』の数値にこだわらなければならないのです。

利回りが高いからと言って利益が多いとは限らない

利回りが高いということはどういうことかを今一度考えてみましょう。

『利回り』とはパーセンテージにすぎません。利回りと実際の利益額の関係を分かりやすく説明します。

あなたは「より多くの利益を残したい」不動産投資家です。

利回り15%の不動産を1,000万円で購入し運用した場合、年間で手元に残る金額は150万円になります。15%の利回りは相当いい条件のようですが、次の場合はどうでしょうか。

利回り5%の不動産を5000万円で購入し運用するとします。すると、手元には250万円の利益が残ります。

これらの不動産投資を比較した場合、手元にの残る金額が大きいのは利回り5%の不動産です。

さらに、利回りが高い不動産の場合、何らかのリスクを抱える形になります。逆に利回りが低いような不動産は商品としてのリスクも低い傾向にあり、安全な投資が可能になります。

手元に多くのお金を残したい場合は、利回りが高い不動産に投資することだけが全てではないということです。

不動産投資物件の担保評価性を重視する

担保評価性の高い不動産はいい物件なのでしょうか。考え方によってはYESでありNOです。

不動産投資を今後大きく展開していきたい投資家にとっては、不動産そのものが評価され、金融機関から融資を受ける際の担保になります。要するに、”お金が借りやすい物件”だということです。

金融機関の評価基準は2通りある

不動産の評価基準は金融機関によって違います。

「積算評価」「収益還元評価」の2種類に分かれています。

積算評価」は土地と建物の価格を計算し足し合わせる算出方法で、金融機関にとってはポピュラーな評価方法です。

土地の計算方法は路線価に対して土地の面積を掛け合わせる計算方法になります。

建物の評価方法については『再調達価格×延べ床面積×(法定耐用年数-築年数)÷法定耐用年数』によって算出することができ、銀行が融資をする際に、不動産にどれくらいの担保評価があるのかを確認するための指標になるのです。

もう少し具体的に見ていきます。

再調達価格とは、評価したい建物を新たに購入したり、新築する際に必要なコストの事を言います。コストについては、建物の構造によって、建築資材が異なるため、基準となる価格が用意されているのです。

1㎡あたりの金額は、木造と軽量鉄骨造は13万円、重量鉄骨造は18万円、RC造・SRC造は20万円を基準に評価されます。建築資材の高騰や物価高騰などの事情は考慮されるようですが、原則的にこの価格がベースです。

法定耐用年数についても、建物の構造によって変わってきます。

法定耐用年数は、建物の減価償却を計算するために定められたものです。木造22年、軽量鉄骨27年、重要鉄骨34年、RC造47年といったように、建物の構造によって法廷耐用年数は決まっています。

「収益還元評価」

もう一つの『収益還元評価』には、直接還元法とDCF法の2つの算出方法がありますが、ここでは直接還元法についてのみ取り扱います。直接還元法は、多くの不動産業者が不動産価格の算定に用いる計算方法で、個人投資家が行うスケールの不動産投資ではこの方式で十分です。

直接還元法の計算は、『1年間の利益÷還元利回り』によって不動産価格を算定します。

少し聞きなれない言葉ですが、還元利回りとは、近隣の取引事例などを参考にして、利回り何%なら買いたい人がいるか?ということを基準にした値になります。

例えば、日本政策金融公庫などで融資を受ける場合は『収益還元評価』に重きをおいてくれるケースが多いようです。なぜなら、不動産投資の位置づけが”投資”ではなく『貸家業』という”事業”であることから事業の収益性を重視するためです。

金融機関によって評価方法は異なるので戦略的に考える

金融機関によって、評価方法は変わったりウェイトに違いがあります。

『積算評価』で不動産そのものの価値を評価するケースや『収益還元評価』によって、不動産の収益性を重視するケース、両方を掛け合わせて考えるケースと実に様々です。

『積算評価』の場合は、築古のアパートなどには融資が下りませんが『収益還元評価』で判断する金融機関であれば融資が下りる場合もあります。

同じ不動産なのに計算の方法によって、その評価が大きく変わるのが不動産投資の面白いところです。