不動産投資での物件選びに関わる、用途地域全13種
前回の記事で、住宅の用途用地について地域ごとの特徴を解説させていただきました。
用途地域は『住宅系』『商業系』『工業系』に分類することができ、さらにそれを13の地域に分類することができるのです。
用途地域を一覧で解説
13種類の用途地域ですが、全ては先述した3つに分類されます。
それぞれの地域では建築物に制限が発生します。建物が建てられる、建てられない、面積、階数等の制限があります。
これは、都市計画の中で地域に応じて快適な住環境を整備するために、様々な制限を設けているのためです。
住宅に関する用途地域
住宅に関する用途地域は全部で8つに分類されます。
第一種低層住宅地域
まず最初は『第一種低層住宅地域』です。これは最も建築物の制約の多い地域になります。この地域で建築できる建物は以下の通りです。
- 住宅、共同住宅、寄宿舎、下宿
- 兼用住宅(事務所兼・店舗兼等)で非住宅部分の床面積が50㎡かつ建築物の延べ床面積の2分の1未満のもの
- 幼稚園、小学校、中学校、高等学校
- 図書館等
- 派出所、一定規模以下の郵便局
- 神社等
- 公衆浴場、診療所、保育所等
- 老人ホーム、身体障害者福祉ホーム等
このような建物が建築できます。分かりやすくまとめると、暮らすのに最低限必要な環境が整っている地域で、高層マンションやビルはなく、見晴らしがよく日当たりのいい閑静な住宅街といったイメージです。
都心からのアクセスは悪いですが、地価も安く手頃な価格で家を持つことができ、最近では、テレワークやリモートワークの普及によって、長閑な地域でのんびりと暮らしたいといったニーズが高まっていて、このような地域へ移住するかたも目立ち始めています。
第二種低層住宅地域
こちらも第一種低層住居専用地域と同じく、低層住宅のための地域です。
建物の高さは第一種低層住宅地域と同じく10m(12m)に制限されています。第一種低層住宅地域との違いは、ちょっとした店舗は認められていて、床面積が150㎡以下であれば可能でコンビニや飲食店が建てられます。
閑静な住宅街に住みたいながらも、ちょっとした利便性を求めている方に最適です。
第一種中高層住宅専用地域
中高層住宅を建てることができる地域です。この地域ではマンションなどが目立ち始めます。店舗等は、床面積が150㎡を超え500㎡以下のものを建てることができます。
また、第一種中高層専用地域では大学や病院などを建てることができるようになります。
街並を見ると、背の高い建物や住宅以外の建物が目立つようになります。3階建て以上のマンションの建築が認められているので、閑静な環境で分譲マンションの購入を考えている方などにはオススメの地域です。
第二種中高層住居専用地域
このエリアでは、第一種中高層専用地域で建築可能なて建物に加えて、2階建て以下で床面積1,500㎡以下店舗や事務所を建てることができます。
第一種住居地域
第一種住宅地域では、住宅はもちろんのこと、第一種・第二種中高層住居専用地域で建築が可能な建物に加えて、床面積が3,000㎡以内の建物が建築可能です。
これまでお伝えしてきた、「第一種低層住宅地域」「第二種低層住宅地域」「第一種中高層住宅専用地域」「第二種中高層住居専用地域」と比べると、だいぶ賑やかな雰囲気になってきます。
個別具体的には色々な建築物がありますが、ボーリング上やグルフ練習場は建築できますが、カラオケ店やパチンコ屋、映画館などは建築できないのも特徴の一つです。他にも3,000㎡以下であれば自動車教習所もOKです。
第二種住居地域
第一種住居地域で可能な建物に加えて、カラオケボックス、パチンコ屋、麻雀屋などが建設可能です。これまでの雰囲気とは異なり、賑やかな雰囲気になってきます。
このエリアになると、子供のいない夫婦や、若者単身世帯が多くなってきます。
準住居地域
「準住居地域」は、国道や幹線道路沿いが指定されることが多く、第二種住居地域で可能な建物に加えて、車庫や倉庫、作業場の床面積が150㎡以下の自動車修理工場、客席部分200㎡未満の劇場や映画館、ナイトクラブなどが建てられます。
この地域では、道路との調和が取れた住環境を作り出すことが目的とされています。
田園住居地域
最後は、「田園住居地域」です。
この地域は、農業と調和の取れた低層住宅の環境を守るための地域です。
高い建物や各種施設は建設することができません。店舗に関しても基本NGですが、農作物の直売所や農家レストラン等のみは2階以下の建設は許可されています。
倉庫についても、農作物及び農業の生産資材を貯蔵する目的に限り認められています。工場についても農作物を生産、集荷、処理加工するような工場に限り建築を認められています。
商業に関する用途地域
商業に関する用途地域は全部で2つです。
この地域では住宅を建設することもできますが、商業施設の建設が優先されます。ですので、今まで日が当たっていたのにも関わらず、急に大きなビルが建設されて、日当たりが悪くなるようなことも頻繁にあります。
このエリアに暮らす場合は、十分注意が必要です。
近隣商業地域
この地域では、住宅のための地域ではありません。近隣に暮らす人が買い物などをするための地域で、商業施設や買い物施設が多い地域です。
この地域では、危険性や環境を悪化させる恐れがある工場以外の建設も可能です。
商業地域
商業地域とは、いわゆる繁華街です。
近隣商業地域で建築可能な施設に加えて、キャバレーや風俗店の営業も認められている地域です。条件としてはかなり緩和されていて、銀行や映画館、飲食店、百貨店、路面店などが乱立しています。
住環境としては、少々騒がしい地域ではありますが、ターミナル駅前などが指定されることが多く、利便性を求める方や若者、単身者などにとっては一度は憧れる地域です。分譲価格や賃料は他のエリアよりも高く人気のエリアとなっています。
工業に関する用途地域
最後に工業地域について紹介します。
工業地域では、主に工場が優先され、基本的に人が快適に暮らすにはあまり適していない地域です。とはいえ、住むことができないわけではなく、一部地域を除いて人が暮らすこともできるのです。
準工業地域
準工業地域とは主に町工場が立ち並ぶ地域のことをいいます。
危険(火薬・石油・ガスなど)が伴ったり、著しく環境を悪化させるような工場などを除いては、大抵の工場は建設することができます。
同時に、住宅も建設することもでき、カラオケボックスやパチンコ屋、ナイトクラブなど、様々な店舗や施設を建設することが可能です。
工業地域
準工業地域と比べて工業地域は、どんな工場でも建てることができます。
住宅は建設することはできますが、ホテルなどの建設はできません。ボーリング場やスケート場、水泳場、ゴルフ練習場の建設はできるのですが、カラオケ店やパチンコ店などについては10,000㎡以下という制限があります。また、地域内に病院を建設することができないのも準工業地域との大きな違いです。
工業地域は湾岸エリアに多く、住宅は眺望のいい高層マンションが多いのが特徴です。
工業専用地域
工業専用地域はその名の通り、工業専用の地域です。ですので住宅を建設することができず、そこに人が住むことはできません。
その理由は、火薬、石油、ガスなどの危険が常に伴うからです。
港湾地域の石油コンビナートや製鉄所などを思い浮かべていただければ、そこに住む気にはならないとは思いますが。。。
ライフスタイルや目的によって地域を考える
これまで、13種類の地域をご紹介してきました。
「住宅」「商業」「工業」に分かれた13の地域に分けることができますが、その中で住むことができる地域は12地域も存在します。
家庭環境や家族構成、年齢、性別、社会属性などによって、人それぞれ住むのに適した環境は異なります。
逆に言えば、不動産販売図面や賃貸図面の中の用途地域を確認することによって、あなたの生活のイメージが沸いてきます。
閑静な住宅街なのか、近隣にコンビニやスーパーはあるのか、飲食店はたくさんあるか、交通の便は良さそうか、など入居前にある程度は想像することができるということです。
これから転居を検討されている方は、特にこの『用途地域』を理解し確認する習慣をつけることで後悔しない不動産選びができるかもしれませんね。