中古住宅市場の活性化と一般化に向けた課題とは?

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日本国内でも徐々に中古不動産市場が活性化してきている。特に中古マンションにおいては、販売戸数が新築を上回り、今後も市場の活性化が見込まれるだろう。

東京カンティの調査では、2019年9月の首都圏の中古マンションの平均価格(70平米換算)は、前月より0.6%上昇して、3,727万円、東京都では、2.7%増の5,165万円で最高値を更新した。

23区内を見ても、5,764万円お高水準になっている。都心6区(千代田、中央、港、新宿、渋谷、文京)では、ついに8,000万円台の大台に達した。

これは、消費者の都心に住みたいという志向が極めて値良いことを裏付けている。

しかし、中古住宅市場が一般的になるためには、まだ多くの解決しなければならない課題があるのも事実だ。

今回は、中古住宅が活性化し始めた背景と、今後一般化するための課題について記事にしていきたいと思う。

新築マンション価格の高騰

最近では、共働き世帯が増えてきている。通勤に便利な駅近くのマンションの需要が高まっているため、新築マンションの価格も高騰している。

高騰する23区内の新築マンション

世代収入が1500万円を超えるようなパワーカップルとはいえ、23区内で7000万円台まで高騰したマンションを購入するのはさすがに躊躇するのではないか。

それであればと、平均して2-3割程下がる中古マンションを購入しようという動きが加速している。

利便性の高い新築マンションの供給量の減少

今年の首都圏のマンション供給量は不動産経済研究所の予測によると3万7000戸の横ばいと予想されている。

都心部では、大規模な物件を供給できる土地が見当たらず、この傾向はしばらく続くと予想される。

一方で、中古マンションに目を向けると、2000年~2007年頃までに年間7万~9万戸の大量供給されていた新築マンションが中古として市場に出始めているという。

この頃に発売されたマンションは、設備もしっかりしていて今流行りの間取りも先取りしている物件も多く、こうした物件を購入してリフォーム、リノベーションする消費者が増えているという。

利便性の高い新築マンションは開発用の土地が少ないことからも、供給量が増えることは見込めない。そうした状況の中、首都圏に人口流入が続けば、中古マンションに人が流れるのは必然的な動きである。

リノベーションやリフォームで自分好みの部屋へ

ライフスタイルの多様化や晩婚化により、おしゃれな暮らしを実現したい、独身者が増えてきている。

中古の3DKのマンションを改装して1LDKの広いリビングの部屋に改装したり、趣味や趣向を全面に表現した部屋に住む消費者も増えている。

木のぬくもりを活かしたリノベーション

新築や既存の中古マンションにはない、おしゃれな空間を造るために、敢えてリノベーションをすることで、理想の生活環境を手に入れているのである。

人口は減少し世帯数の頭打ちだが・・・

中古不動産市場の活性化は、首都圏のマンションに限った話だ。全国的に見た場合、中古の流通量はマンション、戸建てを合わせても全体の15%弱となり、依然低水準である。

現在、日本の住宅総数は、6241万戸(2018年)だが、内13.6%に当たる849万戸が空き家状態だ。

更に、少子高齢化も進み、人口は既に減少傾向が続いている。世帯数に関しては、2023年の5419万世帯をピークに、以後は減少することが予想されている。

空き家の増加、人口減少、世帯数の減少。このような状況では、住宅需要の先行きは頭打ちになるのは明白なのである。

このような状況にも関わらず、日本では構造変化に対応した住宅政策が全く実施されていない。マンションを建て、戸建てを建てることで、日本の経済は活性化され経済成長につながるとされており、国も銀行も歓迎の姿勢を示していた。

一説によると、新築のマンションを建設することで、その費用の2倍以上の経済効果があると見られており、新築の建設は、日本のGDPを押し上げる要因にもなってきた。税制面で新築を優遇する住宅政策で新築の購入を促し、経済を下支えしてきたのである。

しかし、それも過去の話だ。今や日本のGDPは中国に抜かれ、近い将来にはインドにも抜かれる事になるだろう。

今後の日本経済は、建設や住宅政策による経済成長は期待できない。それは先述した通りであるが、人口の減少による世帯数の減少が見込まれているからだ。

新築と中古の政策インセンティブの違い

繰り返しになるが、全国の空き家は849万戸あると言われている。

人口が減少し世帯数の減少が予想される中では、1戸の新築を建てることで1戸の空き家が生まれる計算だ。

1990年代までは、一戸の新築を建てる事による経済効果は住宅価格の2倍あると言われていたが、今ではプラスマイナスゼロになる。空き家ができることによる治安の問題や地域の過疎化などを考慮すれば、むしろマイナスになるのではないだろうか。

このような状況の中、住宅政策の抜本的な見直しが必要になると私は考えている。

現在、新築購入の主なインセンティブは、「所得税の減税」「固定資産税」の扱い方の違いになる。

所得税に関しては、新築の場合、住宅面積が50平米以上かつ所得合計額が3000万円以下の場合、12月末時点でのローン残高の1%の所得税額が13年間減税される。中古の場合は、これら条件を満たすのに加えて、木造は築20年、新耐震基準のマンションは築25年以内の建物に限定されている。(※耐震対応するなどした場合はこの限りではない)

固定資産税に関しては、新築の場合は戸建ては3年間、マンションは5年間に渡って半額に減税される。中の場合は固定資産税の減税はない。

住宅政策を中古優遇にシフトするメリット

このように、新築優遇の住宅政策が取られている以上、誰もが新築を購入するし、選択肢に必ず入ってくるはずだ。

欧米のように、中古住宅の売買が一般的に根付いており、中古を明白に優遇するような制度に舵を切り替えるべきだと思う。

空き家が生まれることによる経済的損失治安の悪化を防ぎ、安価で良質な住宅を購入することによって生まれる、可処分所得の増加は、消費者の購買意欲の向上ゆとりのある生活に必ずつながると私は思う。

質が高く健康的な生活によって消費者の購買意欲も増加する

中古住宅市場が一般化するための課題

2010年6月に閣議決定された「新成長戦略」の中で、『2020年までに中古住宅・リフォーム市場の規模を2倍(20兆円)にする』という目標を掲げたが、達成できていない。改めて、この成長戦略については見直していただきたい。

さらに、中古住宅の評価基準においても、従来の固定資産税評価額による評価だけでなく、時価評価するよう義務化してくべきだと考えている。

現在では、建築技術の進歩により物理的耐用年数が100年を超えるような建物も供給されている。

物理的耐用年数をベースにした、立地、収益性など法定耐用年数にとらわれない多角的な視点から、きちんとした経済的耐用年数を算出し、時価評価する仕組みが必要ではないだろうか。

そうすることで、中古不動産市場は今後さらに活性化し不動産を資産として捉える消費者も増えてくると考えられる。