フランスの「ビアジェ」から学ぶ中古不動産の利活用方法

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世界には様々な不動産の購入方法がある。

フランスの[ビアジェ]という特殊な不動産売買契約をご存知だろうか。この契約は少々ギャンブル性が高く、非常に特殊な契約である。

今回はこの興味深い契約制度である[ビアジェ]について紹介していく。

Contents

ビアジェの歴史はかなり古い

まずは歴史を紐解いてみよう。

[ビアジェ]の歴史は非常に古く、古代エジプトや古代ローマ時代にまで遡る。フランスでは、9世紀に取り入れられ、17世紀初頭のナポレオンの時代の民法典で成文化されている。

ナポレオンが欧州を制覇した時代に各国に広がっており、現在でもベルギー、フランス、イタリアやスイスなどでも似たようなシステムが残っている。

どのような不動産売買契約なのか?

[ビアジェ]とはどのような不動産売買契約なのだろうか。

売主と買主

まずは、[売主]と[買主]について。

[売主]は高齢者で[買主]は現役世代になる。

[売主]である高齢者が住居を売却する際に、「それでも住み慣れた家に生涯に渡り住み続けたい」という希望を叶える契約で、自宅の引き渡し時期を自らの死亡時または希望する時とされているのが大きな特徴である。

一方で[買主]は契約時に物件の所有権を持つことになるが、引き続き[売主]を居住させ、引き渡しのタイミングを待つことになる。

一時金と毎月の支払い

[買主]は不動産を購入する際に[一時金]を支払う。一時金は法律で明確に定められている訳ではないが、一般的な慣習として物件価格の30%程度とされているようだ。

次に、[買主]は[売主]が死亡するまでの間、[一定額]を年金のように毎月払い続ける。ビアジェの平均的な金額は、715ユーロ(日本円にして約85,800円)で、これは[売主]の物件価格や一時金とのバランスにより変動する。

売主のメリット

当然、物件価格は通常の不動産購入と比べて安くなる。

ただし、所有権は既に[買主]に移行しているため、[売主]は物件の維持管理費や税金を支払うことはない。

また[売主]は、所有権はないものの、毎月の賃料を支払うことなく、継続して住み続けることができる。

これは[売主]にとって、とても都合のいいサービスである。

買主のメリット

一方で[買主]にとってのメリットはどのうよなものが考えられるだろうか。

[買主]にとっては、良質な物件が手頃な価格で所有できるという点が魅力だ。

[ビアジェ]での取引が活発に行われているパリ市内では、不動産価格の高騰が目立っており、手に入れることが難しくなってきている。制度を上手に活用して、不動産を所有できる点は、[買主]にとっても魅力的な制度なのだ。

総支払額はいくらになるか分からない

[ビアジェ]という制度を知ると、あることに気がつく。最終的に[買主]が支払う金額は、[売主]が”どれだけ長生きするか”によって大きく変わってくるということだ。

もし、契約後1年で[売主]が亡くなった場合は、[一時金+1年分の一定額]で支払いが完了し物件が引き渡されるが、契約後20年生存した場合は、[一時金+20年分の一定額]を支払う必要がある。一般的な感覚だと、射幸性の高い契約だと考えられるが現地では不謹慎な捉え方をする人は少ないようだ。(*実際のところはわからないが。。。)

売却価格の相場は、国(フランス国家)が発表する平均寿命をベースに平均生存期間を計算する。「売主」の希望により売却価格を低く設定し、その差額を毎月受け取れるようにすることも可能だ。

壮絶な交渉エピソード

しかしビアジェの契約においては、[売主]と[買主]の交渉における壮絶な交渉エピソードがあるようだ。

例えば、交渉時に「売主」は”もの凄く元気な姿”では現れない。相手に対して、”もう先は長くない”と思わせ、毎月の一定額を出来るだけ多く貰おうとするのである。一方で、「買主」も身辺的な調査をしたりする。近所のパン屋やスーパーなど「あの老人は本当は元気なのではないか?」といった聞き込みをしたりするそうだ。

実際にあったおもしろいエピソード

70歳くらいの[売主]と40代の[買主]が[ビアジェ]での契約を締結した。

契約時、その老人は年齢の割に老けている様子で、「この老人はそこまで長くないだろう」と踏んでいたようだ。

しかし、いつまで経ってもその老人は、身体は元気で病気一つすることなく、老け込む様子がない。。。

そうこうしている間に、買主は亡くなってしまった。。。

いつまでも元気だった老人は、世界最高齢のギネス記録に到達するほどの天寿を全うしたそうだ。

結局、その老人はビアジェによる恩恵を最大限受けたことになり、一方で[買主]は結果的に契約損をした形となった。

契約する相手が悪かった。。。という話だ。なんとも恐るべし。。。

なぜビアジェがここまで普及しているのか

現在、フランスでは年間5000件近いビアジェの成約件数があると言われている。これは不動産取引の約2.5%になる。

このような不確実性が高く、場合によっては犯罪に発展する可能性のある制度がどうして長い間普及しているのだろうか。

フランス民法典にビアジェが明文化されている

民法典に明文化されることで、成熟した制度として成り立っていることが裏付けられる。

公証人立ち会いによる契約締結

フランスでは不動産売買契約は必ず公証役場で公証人立ち会いのもと締結される。これにより契約の公平性がしっかり吟味され証明され[売主[[買主]ともに安全な契約ができることになるのだ。このような後ろ盾があるからこそ[ビアジェ]のように複雑な不動産売買契約においても法律上安全に締結できるのである。

「抵当権付終身貸付」と比較して魅力的である

フランスでは[抵当権付終身貸付]のアイディアはサルコジ大統領がアメリカから持ち込んだものとされている。これは、アメリカのリバースモーゲージをモデルにしたものだ。

2007年に[抵当権付終身貸付]は商品化されているが「ビアジェ」とは一線を画す。つまり、[抵当権付終身貸付]は銀行の貸付け商品であることに対して、「ビアジェ」は、不動産売買であるということだ。

この性質の違いから、[売主]の手元に入るお金が圧倒的に違うのである。一説によると、同価値の物件を対象にした場合、手元に残る金額はおよそ2倍の開きがあるという。

また、不動産を売却してしまえば、その維持管理も免責され、税金の支払い義務もなくなる。維持管理コストが一切かからなくなるのも魅力の一つだろう。

また、[ビアジェ]と比べて[抵当権付終身貸付]がフランス国内で浸透しないのは、銀行の貸付金利が約8%とかなり高い金利をかけているためである。これに関しては、[ビアジェ]の制度が非常に優れているため、銀行も「抵当権付終身貸付」に対して、消極的な対応であることがうかがえる。

パリ市内の不動産価格の高騰

パリと言えば、芸術、歴史、建造物などの歴史的な魅力を色濃く残しつつも、ファッション、グルメなどの流行の最先端をいく、世界的な都市だ。観光都市としても有名で、世界中から観光客が集まっている。

不動産価格も高騰しており、そう簡単に手を出せる金額ではない。中心地では、一平方メートル1万ユーロにもなると言われている。

そのような状況でも、比較的手軽に物件の購入ができるよう、[ビアジェ]が有効活用されているようだ。

築年数による価値の低下がほとんどない

物件の価値が、年数の経過に比例して下がりにくいことも制度を後押ししている。フランス(特にパリ)の場合、築年数による価値の低下はほとんどないと言われている。むしろ歴史的観点から、価値が高騰する場合もあるのだ。

このような背景があると、購入する側も安心して購入できるし、次の世代にも安心してバトンタッチできるのだ。

高齢化社会

2018年現在、フランスは65歳以上の割合が世界で10番目(20.06%)に多い、高齢化社会である。*日本は27.47%で世界1位

高齢者は医療介護のための費用も出費しなければならない。まず一番費用が抑えられるのは高齢者を現在の住居に住み続けさせることである。

高齢者施設を建設するにしても、パリ市内では不動産の価格が高騰していて、1平方につき1万ユーロという費用がかかる状況からすれば、高齢者を施設等で受け入れるのは非常に困難な話である。

なので、[ビアジェ]という制度を活用してもらい、医療介護の資金を捻出してもらいつつ、現状の住居に住み続けてもらうとしているのである。

日本にも似たような制度が必要ではないか?

フランスで普及している[ビアジェ]については、超高齢化社会である、日本においても参考になる部分たくさんあると思う。

高齢者の8割以上はマイホームを持っている状況の中、[空き家問題]は今後ますます加速するだろう。一方で私たち現役世代である、若者の持ち家離れは顕著である。

賃貸に関しても、歳を取るにつれて住まいの確保は難しくなるだろう。

また、「空き家・遊休不動産をどのように活用するか」今後の大きな課題であり、これらの問題を解決する手段が求められる。

中古不動産市場を活性化させる意味でも、フランスの[ビアジェ]はとても参考になるのではないだろうか。