公道と私道の違いとその特徴を把握しよう
記事を読んでいただいた方の中には、不動産投資をこれからスタートしようと考えている方や不動産を新たに購入しようと検討中の方も多いと思います。
今回は、基本に立ち返り、「公道」と「私道」の違いを理解しつつ、その特徴も把握していきます。
普段、私たちが何気なく使っている道路ですが、普段は表舞台に出ないとても地味な存在なので、少し寂しがっているようです。。。
ところが、いざクライマックスに突入する(不動産を購入段階)と、一気にスポットライトを浴びる存在になり、眩いばかりの輝きを放ちます。
まるで、将棋の駒に例えると、「歩」が「金」になって、良くも悪くもキーポイントになる感じでしょうか。
公道と私道の違い
公道と私道の違いは、言葉の通りです。
公道は、国や地方自治体が所有、管理している道路で一般的にイメージする道路がそれにあたります。一方で私道は、個人や企業などが所有している道路になります。
この「私道」が不動産の世界では、曲者でやっかいな存在になってくるのです。
私道は、所有者がいますので、公図に番号が入っていることが”ほとんど”です。ですので、公図を確認すれば大抵のことはわかります。しかし、公図に番号が入っていても、公道だったり、逆に番号が入っていなくても私道であるケースもあります。
このような場合は、測量図などを入手して詳細に確認する必要があります。
それぞれの注意点とポイントがある
公道の場合は特に問題ありません。原則、建築基準法の接道義務(4m以上の道路に2m以上接すること)をクリアしていれば、神経質になる必要はないと思います。
一方、私道はどうでしょうか。これが一筋縄ではいかないのです。
道路が私道の場合、家などの建物が建てられない場合や自動車の通行ができない場合があるので注意が必要です。
建築基準法で認められた道路なのかを確認する
前述した通り、私道の場合は少し神経を尖らせる必要があります。
ポイントは、建築基準法で認められているか否かです。
認められていない道路にしか接していない敷地の場合は、かなり注意が必要です。
建築基準法第43条1項を確認してみると
建築基準法で認められていない道路の場合、ただの土地を道路として使っているだけです。
建築基準法第43条1項のただし書き空地というのがその道路に該当します。
第43条
Wikibooksより
建築物の敷地は、道路(次に掲げるものを除く。第四十四条第一項を除き、以下同じ。)に二メートル以上接しなければならない。ただし、その敷地の周囲に広い空地を有する建築物その他の国土交通省令で定める基準に適合する建築物で、特定行政庁が交通上、安全上、防火上及び衛生上支障がないと認めて建築審査会の同意を得て許可したものについては、この限りでない。一 自動車のみの交通の用に供する道路
二 高架の道路その他の道路であつて自動車の沿道への出入りができない構造のものとして政令で定める基準に該当するもの(第44条第1項第三号において「特定高架道路等」という。)で、地区計画の区域(地区整備計画が定められている区域のうち都市計画法第12条の11 の規定により建築物その他の工作物の敷地として併せて利用すべき区域として定められている区域に限る。同号において同じ。)内のもの 。
これらの認められていない道路にしか接していない土地には新たに建物を建てることはできません。
建築基準法で認められていない私道は要注意
建築基準法第43条1項ただし空地などが、建築基準法上で認められていない道路になります。
道路として認められていない道路にしか接していない土地には、建物を建てることができません。
建物が立っている場合は「再建築不可」扱いとなり、 建築確認申請の許可が下りないため建替えができません。
また、このような道路は道路自体を廃止したり、道路上に何かを作ったり、他人に貸すことも可能です。今は道路でも将来、道路ではなくなる可能性も十分考えられますので、住宅地としての購入は十分注意しましょう。
土地に接する道路が私道であれば建築基準法で認められている道路かをチェックする
実際購入を検討している土地や土地付き不動産の道路が私道に接している場合は、必ず、建築基準法で認められている道路であることを確認して下さい。
具体的に確認すべきポイントとしては、
- 位置指定道路(建築基準法第42条第1項第5号で定めた道路)
- 二項道路(建築基準法第42条第2項で定めたみなし道路)
になります。(一部例外あり)
位置指定道路は私道ですが、公道に近い条件が満たされています。道路幅が広く4m以上あるものが多く、コーナには隅切りがあります。
都道府県や市区町村から位置指定を受けた道路に関しては、道路上の建築、道路そのものの廃止、用途変更に制限がかかります。ですので、目の前の道路が突然なくなるといった心配もありません。
加えて、私道とはいえ位置指定を受けた道路は、所有者の許可がなくても通行が可能です。
※ただし、自動車の通行は許可が必要になる場合もある。
建築基準法第42条第1項第5号
土地を建築物の敷地として利用するため、道路法 、都市計画法 、土地区画整理法 、都市再開発法 、新都市基盤整備法 、大都市地域における住宅及び住宅地の供給の促進に関する特別措置法 又は密集市街地整備法 によらないで築造する政令で定める基準に適合する道で、これを築造しようとする者が特定行政庁からその位置の指定を受けたもの
Wikibooks より
二項道路は、道路の幅が4m未満の狭い道路です。本来は道路の幅が4m以上なければなりません。二項道路とはその基準を満たしていないが、道路とみなしてよいとされています。
このような条件に抵触している土地の場合、現在建物が立っている場合は、そのまま利用することが可能です。
ただし、再建築をする場合はこの限りではなく、道路の中心線から2m分を道路部分として差出し、残った土地で建物を建てる必要があります。
不動産の広告等でよく「セットバックあり」と書かれている物件がありますが、その多くはこのことを指します。
よって、二項道路の特徴として道路の端が狭かったり広かったりといびつな形をしているのが特徴です。
私道であるが故のデメリットについても把握する
私道であっても、上述した通り位置指定道路や二項道路であれば住宅としての使用(再建築含む)も可能です。
また、実際に多くの物件が商品として販売されています。
ここでは、私道であることのデメリットをちゃんと理解しておくことが大事です。
道路のメンテナンス
1つ目に、「道路のメンテナンスが所有者負担となる」ことが挙げられます。
これは、日常生活をしていく上では特に費用が発生することはなく、あまり気にならない項目でしょう。
しかし、大地震が発生した際に、道路自体の亀裂や、地中に埋まっているガス管や水道管の破裂や亀裂などが発生した場合は、所有者負担となります。
地中の配管の修復となると、道路を掘り、配管の修復をし道路を補修する。といった一連の作業が必要になり、相当のコストがかかります。
所有者自身が全額負担できない場合も考えられるでしょうし、費用の請求を受けるなど実際に負担が生じる可能性もあります。
ただし、ライフラインの補修費用については、ケース・バイ・ケースとなりますので、どのようになっているのかをきちんと把握しておく必要があります。
私道に埋設されている水道管や下水管などの所有者が誰なのかによります。当然公道の場合は、水道局や下水道局が所有・管理しているので、費用は発生しません。私道の場合も同様です。
しかし、私道に埋設されている上下水道は私設管である場合があります。これが破損した場合はその修復費用は所有者または利用者で負担することとなります。
所有物であるがためのトラブル
少しわかりずらいかもしれませんが、私たちは、「道路とは公共のものである」と認識します。しかし、私道は道路ですが、誰かの所有物であり「公共性はないもの」となります。
私道であるがために、日常的に駐車をしたり、ゴミを置いたり、植栽を植えたりするなど、道路を私的利用してしまうのです。
また、所有者変更のタイミングで車の通行を制限されたりするケースも実際にあります。
私道は所有者のものになるので、当然の権利と言われればそれまでですが、利用者にとっては、居心地が悪く、不自由を強いられるといったトラブルが発生します。
こういった、トラブルはある程度、話し合いで予防・解決ができますが、公道と比べると強制力が弱く、所有者の意識に委ねる結果になってしまいます。
誤解を招かないためにお伝えしますが、再建築不可物件を有効に活用する方法や購入するメリットはありますし、世の中には一定のニーズもあります。
私道隣接地のメリットも当然ある
これまで、私道であるが故のデメリットをお伝えしてきましたが、デメリットばかりではありません。
先述した、トラブルは全ての私道隣接地で起きているわけではなく、あくまで一例です。
このような物件にもメリットはたくさんあり、上手に付き合うことで購入価格を抑えることができたり、掘り出しものの物件に出会えることだってあります。
売主が不動産会社である場合や売主側の仲介会社である場合は、私道のデメリットについては、業務効率上詳しく教えてくれることはないと思います。当然、重要事項の説明項目ですので、私道である旨の説明はあります。
不動産は非常に高額な買い物で、ある程度のリスクはついてまわります。
リスクとは不確定要素の量です。
面倒でも、こういった情報を収集して、発生する可能性があるトラブルを回避しましょう。