【7月地価LOOKレポート】商業地の地価下落が大きく目立つ結果に・・・

国土交通省が21日発表した主要都市100地区の地価調査『地価LOOKレポート(7月1日時点)』によると、38地区が前回調査(4月1日時点)から地価が下落しました。上昇は1地区にとどまり、8年ぶりに下落が上昇を上回った模様です。

調査を紐解いてみると、新型コロナウイルスの関係で商業地域、観光地の地価が軒並み下落に転じており、特にインバウンド需要の恩恵を受けていた西日本の商業地区(大阪・京都)の下落が目立っています。

調査対象について

調査対象地区は、三大都市圏、地方都市圏において特に地価動向を把握する必要性の高い地区が対象となっています。

具体的には、東京圏43地区(東京・埼玉・神奈川・千葉)、大阪圏25地区(大阪・京都・兵庫・奈良)、名古屋圏9地区、地方中心都市等23地区の合計100地区が対象となっています。

調査地点は、毎年1月1日、4月1日、7月1日、10月1日の4回実施されます。

調査区分を9区分に分ける

評価区分については、上の図のように不動産鑑定評価による調査方法で変動率を9区分に分けています。

調査結果について

今回の調査結果については、新型コロナウイルスの影響もあり、かなり厳しい結果となりました。とはいえ、実需不動産への影響はあまり出ておらず、その点がリーマン・ショック時との違いであるといえそうです。

調査ハイライト

主要都市の高度利用地等100地区における地価調査は、上昇が1地区(前回73)、横ばいが61地区(前回23)、下落が38地区(前回1)となりました。

これまでの上昇傾向とは一転して、そのほとんどが横ばいまたは下落に転じています。

上昇の1地区は「中央1丁目」(仙台市)で、変動区分は3%未満の上昇でした。上昇の地区はこの1箇所で、3%未満の上昇は1地区(前回69)、3%以上~6%未満の上昇は0地区(前回4)となり、減少しました。

0%の横ばいが61地区(前回23)となり増加しました。

3%未満の下落が、30地区(前回4)、3%以上6%未満の下落は8地区(前回0)となり、平成23年第4四半期以来となる3%を超える下落が生じました。

商業系の下落が目立つ

地域別では、75地区で変動区分が下方に移行、24地区で不変、1地区で上方に移行しました。用途別においては、商業系が住宅系より下落地区の割合が高く、地域別では大都市圏の下落が地方圏よりも目立つ結果となりました。

これは、新型コロナウイルスの影響により、需要者の様子見等により取引の停滞が広がるとともに、ホテルや店舗を中心に収益性の低下への懸念から発生しているものとみられます。

リーマンショック時との違い

地価の下落においては、リーマンショック時との比較は避けて通れません。当時の下落要因は、マンションやオフィスの需給バランスの崩壊によるものでしたが、現時点では、需給バランスに大きな変化は見られていません。

個人的な見解ではありますが、上記理由でオフィスの解約や会社員の地方移住が多発するとは考えにくいため、引き続き首都圏の実需不動産のニーズは高止まりすると思われます。

https://oo-ya.jp/trend/2635/

事実、首都圏のマンション販売戸数は前年同月対比100%超えとなっていることからも、実需不動産への影響は、現時点では薄いものだと思われます。

不動産経済研究所が20日発表した7月の首都圏(東京、神奈川、埼玉、千葉)の新築マンション発売戸数は、前年同月比7・8%増の2083戸で11か月ぶりに前年を上回った。新型コロナウイルスの感染拡大で営業活動を見合わせていた不動産業者が、販売を再開した影響が大きい。

首都圏マンション発売、11か月ぶり増加…価格は7・9%上昇(読売新聞オンラインより)

地域別

三大都市圏と地方圏における地域別結果について確認すると、インバウンドへの依存割合が高い関西圏の下落が目立つ結果となりました。

東京圏(43)では、上昇が0地区(前回26)、横ばいが38地区(前回16)、下落が5地区(前回1)となりました。変動区分率が下方に移行した地区は27地区です。

大阪圏(25)では、平成30年1四半期から令和2年1四半期まで9期連続で全ての地区で上昇となっていましたが、今期は全ての地区で、横ばい、または下落に転じています。上昇が0地区(前回25)、横ばいが8地区(前回0)、下落が17地区(前回0)となった。変動区分率が下方に移行した地区は25地区です。

名古屋圏(9)では、平成25年2四半期から令和2年1四半期まで28期連続で全ての地区で上昇となっていましたが、今期は全ての地区で下落に転じています。上昇が0地区(前回9)、横ばいが0地区(前回0)、下落が9地区(前回0)となった。変動区分率が下方に移行した地区は9地区です。

地方圏(23地区)では、上昇が1地区(前回13)、横ばいが15地区(前回7)、下落が7地区(前回3)となった。変動区分率が下方に移行した地区は14地区です。

用途別

最後に、住宅系と商業系での用途別の動向を確認していきます。

住宅系地区(32)では、上昇が0地区(前回23)、横ばいが27地区(前回8)、下落が5地区(前回1)となりました。変動区分率が下方に移行した地区は23地区です。

商業系地区(68)では、上昇が1地区(前回50)、横ばいが34地区(前回15)、下落が33地区(前回3)となりました。変動区分率が下方に移行した地区は52地区です。

商業系地区の下落が目立つ結果となり、新型コロナウイルスによる自粛や収益性低下による懸念が顕著に現れた結果となっています。

商業地の下落が目立つ結果に

今回の調査では、商業地の下落が特に目立つ結果となりました。

京都駅前の風景

下落のうち9割近い33地区を商業地が占め、歓楽街や訪日客向けのホテル、店舗が集積する地区が目立っています。地域別で見ても、東京の「歌舞伎町」や「上野」、大阪市の「心斎橋」、名古屋市の「栄南」、京都市の「京都駅周辺」などが上昇から下落に転じていています。

※今回の記事は、『国土交通省~地価LOOKレポート(令和2年第2四半期)~』を参考にさせていただいております。

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