ポートフォリオとしてのマイホームはどうあるべきか
2019年も残すところあと僅かですが、今年は多くの方が「資産形成」という言葉に敏感になった年ではないでしょうか。
今回は、資産形成の中のマイホームについて少し考えてみました。
「資産形成」がかつてないほど注目
2019年6月3日に金融庁が公表した「高齢社会における資産形成・管理」についての内容が世間を非常に賑わせました。
簡単に言うと、「老後に向けて2000万円の貯蓄が必要ですよ、皆さん。だから今からきちんと資産形成しましょうね~」という内容になります。
その後、2000万円というキーワードが独り歩きして色々と釈明されていましたが、多くの方が資産形成について、改めて考えさせられるいい機会になったのではないかと個人的には思っています。
Googleトレンドで「資産形成」の検索ワードの推移を見ると、2019年6月は過去にない盛り上がりです。
それだけ、多くの方が「資産形成」に関心を持った証拠だと言えます。
資産形成とは
そもそも資産形成とは何なのでしょうか。
よく、「資産形成」と「資産運用」を混同される方がいますが、明確な定義は異なります。
資産形成とは、資産を積み上げる作業で、資産を積み上げていく作業を意味します。
一方で資産運用とは、積み上げた資産を原資にして投資することで利益を上げる作業を意味します。
元本を保障するものを資産形成、元本割れを含めたリスクを伴うものを資産運用と捉えてもいいかもしれません。
本来は意味の違いがありますが、一般的には資産運用も含めた資産形成として認識していることが多く、今回は資産形成と資産運用を含めたものを資産形成としたいと思います。
資産をどのように分散するべきか
資産を形成する上で、まず最初に考えなければならないのは、資産をどの様に分散するかということです。
どこにどれくらいの割合で資産を分散させ、どのように運用するのかを考えていく必要があります。
これを金融や資産形成の世界では「ポートフォリオ」といいます。
銀行に預ける
銀行にお金を預けていても、利息はゼロに等しいです。
10年の定期預金での金利を見てみると、大手都市銀行で0.010%(2019年12月18日現在)となっています。
例えば、300万円を定期預金に預けた場合、10年で3,002,393円(税引き後)にしかなりません。つまり銀行にお金を預けていてもあまり、資産は「形成できるが運用はほとんどできない」ということがわかります。
とはいえ、銀行にお金を預けておかないと不安になる部分もありますので、生活費の3ヶ月〜6か月分を預けておくと良いでしょう。
これは、仮にあなたが無職になった時に何ヶ月生活できるかを基準に考えればいいでしょう。
一般的に半年も無職状態の人はいないと思いますので、多くても半年分の生活費で留めておくべきです。
NISAとiDeCoはやっておこう
通常、株式投資や投資信託で得た利益には20%近い税金がかかりますが、NISAは毎年一定額で購入した金融商品から得られる利益は非課税になる制度です。
少額投資非課税制度で、毎年120万円までの非課税投資枠が設けられます。金額の引き出しは、NISAを売却することで、証券会社の口座からいつでも自由に引き出すことが可能です。
国も積極的に推奨している制度です。国が”税金を免除してでも推奨している制度”ということはサービスとしては優れていると判断していいのではないでしょうか。
一方、iDeCoは確定拠出年金になります。
確定拠出年金とは、事業者や個人が自身で掛け金を拠出(お互いを助け合うためにお金を出し合うこと)して、加入者がその資産を運用することで将来の年金受取額が決定する制度です。
iDeCoも年間の上限額が決まっています。自営業者(第1号被保険者)で年間81万6000円になります。会社員や公務員(第2号被保険者)の上限は14万4000円~27万6000円、専業主婦など(第3号被保険者)は年間27万6000円が上限になります。
iDeCoの引き出しは、60歳以上の受け取り年齢に達してからでないと原則引き出せません。ただし、途中で掛け金の積立を停止したり再開したりすることは可能ですので、無理なく積立ができるのもメリットです。
国債を買う
国債(国にお金を貸す)を買う事は、最も手堅い資産運用の一つです。
個人向け国債という商品が多くありますが、これは元本と利息の支払いを国が保証してますので、銀行に預けるより安全です。
銀行の場合、ペイオフにより個人には一行につき1000万円までは保証されます。しかし、それ以上の保証はされません。
個人向け国債については、国が保証している以上これ以上安全な運用はないと言えるでしょう。
金利は0.05%で10年変動金利タイプ、5年固定金利タイプ、3年の固定金利タイプとなっています。
銀行に手堅く貯金したいとお考えの方は、まずは国債を購入し、手堅く形成するのが良いでしょう。
国債は金融機関窓口、ネットバンクなどを通じて購入することができます。
株式投資や投資信託など
銀行預金、NISA、iDeCo、国債の購入で資産を分厚くしていくことで十分なのですが、更にチャレンジしたい方は株式投資や投資信託にお金を預けることを検討してもいいかもしれません。
ここでもできる限り分散投資を心がけましょう。
世界株、新興国、国内、インデックス投資など、とにかくバランス良く投資することが大事です。そして短期での売り買いを繰り返すのではなく、長期的に保有することを心がけるとよいかと思います。
決して「一点突破でのボロ儲けを狙う」のはやめましょう。。。
マイホームも資産であることを意識する
さて、これまで資産形成について書かせていただきましたが、資産形成に興味を持つとマイホームに関しての視点が少し変わってきます。
残念ながら、日本では中古不動産を適切に査定する制度や仕組みが整っておらず、住宅価値を築年数で計算する傾向が強いため、年数の経過に比例して価値が下がっていきます。
中古不動産がアツい!
中古不動産は年数の経過と比例して資産価値が減少するのであれば、その仕組みを逆手に取った上手な購入方法を見つけていくことが賢い購入方法だと私は思います。
個人的には、築古の戸建ての古い雰囲気を活かしながらリノベーションをすることによる風情のある暮らしもおしゃれで素敵だと思います。
中古戸建に自分らしく暮らすスタイル
近年、レトロ回帰の傾向も追い風となり中古戸建に自分らしく暮らすスタイルが流行に敏感な若者世代を中心に浸透してくるのではないかと思っています。
ただし、住宅ローン減税や固定資産税の軽減を含めても、戸建てはまだまだ新築の方が購入しやすい状況にあります。マンションは中古の取引量が増えているようですが、新築優遇の状況には変わりありません。
しかし、それを上回る中古戸建のメリットがあると私が思います。
- 建物価値はゼロに近い状態で購入できるため、安く購入することができる。(ただしローン審査は難しい)
- 自分の好きなようにリノベーションできる。
- 最近の新築戸建てのような画一的なデザインではないのでオリジナリティが出せる。
ご存知の通り、土地の価値は一部の地価変動を除いて下がることはありません。よって、建物の価値が下がった物件を購入できれば、手に入れた不動産の資産価値を極端に下げることはなくなるのです。
このように上手に資産形成できそうな物件を探すのも中古不動産の醍醐味の一つではないでしょうか。
マイホームを資産形成の一つに組み込む
マイホームを資産形成の中の一つに組み込んでいくという考え方を持つと、購入するべき物件が見えてきます。
よく良質な中古物件という言葉を聞きますが、資産形成の観点から見た良質な中古物件を選んでいく必要があります。
資産形成におけるマイホームになりますので、可能な限り流動性の高い不動産を購入するのが望ましいです。
実需と資産形成のバランスを見ながら「住むのもよし」「自分らしく暮らすもよし」「資産形成にもよし」の三方よしの不動産を探していくとよいでしょう。