【脱!新築物件】中古住宅市場の活性化に必要なこと

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都心における新築マンションの供給量の減少と価格高騰により、マンションを中心に新築から中古にシフトする動きが活発になってきている。2016年~2018年まで3年連続で中古マンションの契約件数が新築を上回ったことは、不動産・住宅業界に”新しい風が吹いた”ことを強く印象付けた。

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都心部における新築マンションの高騰

最近では、共働き世帯が増えてきていて、通勤に便利な駅に近いマンションが好まれている。首都圏のマンション価格の高騰により、いくら共働き世帯とはいえ中々手が出しにくい価格帯に上昇しているのが実情で、新築から中古へのシフトが目立ってきている。

新築よりも平均で30%ほど安く購入することができ、自分好みにリノベーションするといった動きが加速している。

ただし、これは首都圏のマンションに限った話であり、地方においては中古の流通は活性化されていない。これは、地方の高齢化に伴う、相続の問題が関係していると考えられる。いわゆる税対策としての新築不動産も多く含まれれるだろう。

過度な新築優税制

日本の人口は少子高齢化に伴い、減少傾向が続いている。世帯数の推移を見ると、23年の5419万世帯をピークに以降は減少し、40年には5076万世帯になる見通しだ。人口の減少に伴う世帯数の減少、住宅需要の先行きは頭打ちになることは明白である。

このような状況にも関わらず、構造の変化に対応した住宅政策が取られていないのが現状だ。日本では、大手デベロッパーによるタワマン建設に代表される新築マンションの建設や、戸建て住宅を立て続けることで国の経済成長につながり、GDPの増加要因になるとして歓迎してきた。

そして、その方針を下支えしてきたのが、「税制の優遇策」や「給付金」である。新築と中古では、税の優遇(減税適用条件)が異なる。

所得税

所得税では、年末の住宅ローン残高の1%の所得税額額が13年間減税される。減税条件は。居住面積が50平米以上かつ所得合計額が3000万円以下であることが条件となる。

一方で中古住宅の場合は、居住スペースと所得合計額の条件を満たした上に、建物の築年数が絡んでくる。木造は、築20年以内、新耐震基準のマンションは築25年以内のものに限定される。(*耐震基準に満たすようにするなどして適用除外あり)

固定資産税

固定資産税についても新築優遇となっていて、新築の場合は50%減税(戸建て3年、マンション5年)される一方で中古住宅の場合は減税がない。

圧倒的な”新築優遇”制度

このような状況を見ると、圧倒的な”新築優遇”であると言わざるを得ない。中古住宅の税制優遇については、マンションの場合は条件次第で優遇はされるが、戸建てに関しては優遇がなく新築の方が圧倒的に購入しやすい。

「中古戸建を購入して自身のライフスタイルに合わせてリノベーションをする」このような暮らし方は最高に贅沢で優雅な暮らし方だと言わざるを得ないわけで、広く一般的に普及する要素は現時点ではないと思われる。

当然、新築と中古において、税制優遇に違いがあり新築の方が購入しやすい環境下では、中古住宅市場の活性化はされない。

中古住宅への優遇制度を

欧米諸国に目を向けてみると、日本とは真逆の政策を実施しているようだ。新築ではなく中古住宅への優遇を明白に実施しているようだ。

新築による経済効果は薄れてきている

新築住宅を建てるとその経済効果は、住宅価格の2倍にもなると一昔前は言われていた。高度経済成長期、バブル期には新築住宅を建て続けることで、日本の経済を牽引してきた訳だが、それも今や昔の話。一戸新築を立てれば、一戸空き家が生まれる状況の中で、経済効果は逆にマイナスになる場合もある。

空き家問題

日本全体で、7戸に1戸は空き家状態になっている中で、新築を建てること国策として推奨するのは少々無理がある話ではないだろうか。

人口の増加も頭打ちとなり、ストックとなった住宅を有効活用することに対して真剣に向き合う時期に差し掛かってきている。

空き家問題、地方の過疎化などが社会問題化されている状況で、中古住宅市場を活性化させるための国策に是非期待したい。

中古住宅の評価基準を見直す必要がある

欧米諸国と比較して中古住宅市場が活性化しない理由の一つに、中古住宅の評価基準が整備されていない点が考えられる。

重要となるホームインスペクションの普及

中古住宅市場を活性化させるためのキーとなるのが、「ホームインスペクション(住宅診断)」である。2018年から仲介業者は、重要事項説明の際にホームインスペクション制度についての説明が義務付けられているそうだが、あまり普及していないという。

これには明確な理由がある。

日本の場合、住宅の評価基準において、「資産価値を築年数で評価する」傾向が強いため、年数が経過しているだけで評価が大きく下落してしまう。

戸建ての場合は特にそれが顕著で、築30年を経過した建物は資産価値はゼロで土地値だけで判断されることが多い。

これは住宅ローンの借り入れを行なう金融機関の査定も関わってくるため、非常に難しい問題になってくる。

リノベーションをすることによるバリューアップをどのように資産として評価するのかという評価基準は定まっていない以上、中古物件の評価は極めて難しい。

不動産データベースの一元管理も重要

不動産データベースの管理も重要な課題だ。

現在の不動産データベースでは、リフォームやリノベーションの履歴をきちんと把握していないため、データ自体の意味合いが薄れてしまう。

中古車であれば、法定点検や車検、過去の事故歴、メンテナンス履歴などの整備記録がしっかり残っていれば、良質な中古車として価格に反映されやすい。

それは住宅の場合も同じである。

中古住宅の評価を正しく行なうために、過去の修繕、リフォーム、リノベーションなどの履歴をきちんとデータベース化してアクセスできる仕組みが必要だと思う。

欧米諸国のように、そのようなデータベースがしっかり確立され、中古住宅が正当に評価される仕組みが構築されれば、中古不動産にも住宅ローンがつきやすくなり、市場が活性化されるのではないか。

そういった意味でも、冒頭述べたように、中古不動産の査定が一層普及することが重要になってくる。

成熟していない中古不動産市場

このように、中古不動産市場はまだまだ成熟していない新しい市場であることが分かる。

国策としての優遇制度、建物の評価基準、メンテナンスやリノベーション、査定の仕組み、金融機関の評価基準など課題は山積みである。

人口の増加は頭打ちとなり、減少に向けた動きは今後ますます加速する中で、既存の住宅ストックをどのように活かすかを考える局面を迎えている。

住宅購入と住宅ローンは切り離すことができない関係であるが、中古不動産市場をより活性化させるためには、様々な問題を解決するための国をあげての仕組み作りが必要になってくる。

そういった意味で、中古不動産市場は十分伸びしろがあり、可能性を感じる市場ではないだろうか。