誰も教えたがらない地震保険活用方法とその仕組み
地震保険に加入している大家の皆さまは、実際どの程度の割合で制度を活用できていますか?
実際に保険に加入しているにも関わらず、その制度をきちんと利用できている方は少ないようです。
今回は、地震保険の活用方法について少しだけ掘り下げていきたいと思います。
(※)今回記載されている内容については、保険料の受け取りを保証するものではありません。最終的な判断については保険会社に依存することを予めご了承下さい。
Contents
1 そもそも地震保険とは
そもそも地震保険とはどのような保険で、どのようにして保険金の支払いが行われるのでしょうか。
1-1 地震保険とは火災保険の付帯保険である
まず、地震保険は火災保険の付帯保険になります。つまり、火災保険に加入することが前提となります。
お手元の保険証券を詳しく見たことがない方も多いと思いますので、火災保険の証券を一度ご確認下さい。
1-2 どういったタイミングで保険料が支払われるのか
保険料が支払われるタイミングとしては、
「地震や噴火、それにともなう津波による住宅や建物や家財に被害を被った時」
とされています。
具体的には、「全損」 「大半損」 「少半損」 「一部損」 といった形に判断基準が分けられ、被害に応じて保険料が支払われます。
以上が地震保険についての簡単な説明となります。
1-3 保険料支払いの流れに違いがある
保険料支払いの流れは「火災保険」と「地震保険」では大きく異なります。なぜなら、保険金の意味合いが異なるからです。
修繕目的の火災保険
大きく考えると、火災保険は”修繕ありき”となります。ですので、保険金額の支払いに関しても原則的に、業者の見積ベースとなり保険金は修繕費用として使われることになりますね。
修繕費用は、保険会社から業者に支払われるのが一般的です。
お見舞金の役割を果たす地震保険
対して、地震保険には修繕義務が発生しません。この保険金には”お見舞金”としての役割があるからです。見舞金として当面の生活の基盤になるような意味合いが強くあります。
保険料支払いについても、保険会社→被保険者となります。なお、この保険料については非課税(法人の場合は課税対象)となっています。
以上が地震保険についての簡単な説明となります。
地震保険についての詳細は、以前記事にしておりますのでよろしければご確認下さい。
2 既加入の地震保険をきちんと活用できていますか
今回のテーマは「地震保険の活用」です。ですので、既に加入している方た対象のとなってしまいますが、今後、加入を検討されている方も参考になると思います。
地震保険の活用事例として、時間の針を少し巻き戻して2011年の「東日本大震災」を例に制度の活用を考えてみましょう。
2-1 保険加入者にはお見舞金が入ります
地震発生以前に保険に加入していた方は、建物の被害状況に応じて”お見舞金”が支払われます。
保険対象と支払額については以下の通りです。
保険対象:建物・家財 <保険始期が2016年12月31日以前までの契約> |
損害程度 | 保険金支払額 |
全損 | 保険金額の100%(時価が限度) |
半損 | 保険金額の50%(時価の50%が限度) *20%~50% |
一部損 | 保険金額の5%(時価の5%が限度) *3%以上のキズが確認できた場合 |
なお、2017年1月1日以降には、保険対象の定義がより細かくなりました。
保険対象:建物・家財 <保険始期が2017年1月1日以降の契約> |
損害程度 | 保険金支払額 |
全損 | 保険金額の100%(時価が限度) |
大半損 | 保険金額の60%(時価の60%が限度) |
小半損 | 保険金額の30%(時価の30%が限度) |
一部損 | 保険金額の5%(時価の5%が限度) |
先ず、1つ目のポイントとして
「保険加入者には地震による被害状況に応じてお見舞金が入る」
2-2 被災地の定義とは
ここで、東日本大震災の被災状況を地図上に表したデータを見てみます。
消防庁より発表されている災害情報詳報の内、人的被害と建物被害情報を防災科学技術研究所で独自にまとめられたデータを参照してみました。
詳しいデータはこちらかも確認できますので、ぜひご覧ください。
建物の被害状況に絞って見ると、上から、全壊棟数、半壊棟数、一部破損棟数の順番になり、被害状況の範囲を徐々に広げています。すると、全壊と半壊の合計が約30万棟に対し、一部破損の数はその倍以上の約62万棟となることがわかります。
また、建物に被害が及んだ範囲で見てみると、全壊、半壊までで絞った場合、神奈川県の鎌倉市、藤沢市、逗子市手前までとなっていますが、一部破損を含めると2011年の東日本大震災の被災地は、北は青森県、南は静岡県東部までと非常に広範囲に及んでいることがわかります。
ここが2つ目のポイントです。
「首都圏や静岡東部に居住している方々も被災者であり、建物の一部破損でも地震保険が適用できる可能性がある」
2-3 多くの人が気が付かない「一部損」について
ここでは、建物被害の一部破損について、もう少し掘り下げてみましょう。
一部損の定義について少し調べてみました。各市区町村のサイトに記載されている内容は以下のような表現が多くあります。
「損壊の程度が半壊にいたらないが相当の復旧費を要する被害を受けたもの」
表現が抽象的で、解釈の仕方に依存する必要がありそうです。
では、保険会社の定義はどのようになっているでしょうか。
「軸組・基礎・屋根・外壁等の損害額が建物の時価額の3%以上~20%未満」
「え!そうなの!?」と思われた方もいらっしゃると思います。3%の外壁の亀裂でも保険料が支払われる可能性があるのです。
では、3%の外壁の亀裂とはどのような損害でしょうか?
実際に建物を見ないと断言できませんが、抽象的な表現をすれば「ほんのちょっとのキズや亀裂」になります。
このようなキズは日常生活では見落としてしまう場合が多く、重箱の隅をつつくようにして確認しないと気が付かないでしょう。
この程度のキズだと、経年劣化よるものと認識され外壁塗装に修繕で綺麗にしてしまうことも実際多いです。
しかし、建物が震災以前から存在しているものであれば、震災の影響を受けていて、何らかのダメージを受けているでしょう。
外壁塗装を行ってしまった場合は、亀裂の状況などを調べようがなくなりますので、外壁塗装の修繕などを行なう前にキズや亀裂の有無と保険の加入状況を一度確認してみて下さい。
2-4 地震保険は遡って支払われる
地震保険は、保険始期が地震発生以前であれば遡り対象となります。
具体的には、東日本大震災が発生する以前に保険契約がされていた場合は、その地震による破損は地震保険の対象となるということです。
実際に、8年が経過した今になって、購入時には存在しなかった外壁のキズや亀裂を見つけ調査したところ、一部損として認定された。といったケースが数多くあります。
「こんな小さなキズで保険が下りるはずない」と高を括る前に調査してみることをおすすめします。
2-5 建物の構造によっては、損害程度のランクが上がる可能性もある
外壁のちょっとした亀裂も建物の構造によっては、重大な問題である可能性があります。
建築の専門的な話はここでは割愛しますが、例えば、2×4(ツーバイフォー)工法で建てられた建物の場合、「柱」は無く、壁で建物を支えていて、壁の持つ意味合いが変わってきます。
このような建物の壁にキズや亀裂が入った場合は、損害程度の度合いが全く変わってきます。
3 地震保険の申請について
最後に少し、地震保険の申請の話をさせていただきます。
基本的に、地震保険の申請は契約者本人が行わなければなりません。
よくリフォーム業者が申請を代行するのを耳にします。代理申請については、違法ではないですが契約違反となり、その結果、保険金が下りなかったり、契約自体を打ち切りにされるケースもあります。
不動産投資において、制度を活用した資金の調達は重要なテーマです。
マンションの共用部や工場等大型の火災保険となると、過去の事故歴等が考慮されることがありますが、地震保険については利用しても保険料に影響はありません。
正しい手続きを踏んだ上で、制度を有効に活用していきましょう。
その上で、私たち賃貸管理会社より助言・サポートできることはたくさんあります。不安な点、不明な点などあれば遠慮なくご相談下さい。