不動産投資を始めるとは、金融機関を知るということ
「不動産投資とは」を語るにあたって避けて通れないのが、金融機関を知る、ということです。
すでに不動産投資に取り組まれている方も、金融機関の動きには注目しています。
自己資金で投資用不動産を仕入れることは稀ですので、不動産投資とは多くの場合金融機関の融資を活用してスタートするものです。
金融機関といってもその種類は様々で、役割や立ち位置なども異なりますので、知っておいて損はありません。
金融機関とはいっても様々
多くの人は金融機関と聞くと、メガバンクか地元の地銀、ゆうちょ銀行を想像すると思います。
個人の預金を預けていたり、給料の振込先に指定しているのは大体この辺りでしょうか。
個人の預金であればどこでも構わないのですが、事業用の融資となると少し戦略的に取り組む必要があります。
金融機関を活用するメリット
繰り返しになりますが、不動産投資のような大きなお金を動かす場合、余程のことがない限り金融機関から融資を受けることになります。
融資とは個人(または事業者)の信用を元にお金を借りて資金を調達することをいいます。
つまり、平たく言うと"借金"になるわけですが、全ての借金が"悪"ということではありません。
はじめて不動産投資をする方は、まず最初に"この意識"を変える必要があります。
不動産投資を始めるとは、借金が悪という認識を変えるということなのです。
レバレッジ効果で自己資金以上の運用をする
レバレッジ効果とは、自己資金の何倍、何十倍の運用を自己資金以外のお金で運用することです。
例えば、利回り5%の不動産投資に自己資金一千万でスタートするのと、融資を利用して三千万の投資をするのとでは、得ることのできる利益が全然違うということです。
これをレバレッジ効果といいます。
同じ5%でも、得ることのできる利益が全然違うということなのです。
何か怖いような印象を最初は持ってしまいそうですが、思い出してください。
「不動産投資を始めるとは、借金が悪という認識を変えるということ」これは使わない手はありませんよね。
金融機関の種類について
金融機関については、それぞれ特徴や役割が異なってきます。 最初に”ざっくり”と知っておいていただきたいことがあります。それは、『誰もが知っているような大きな金融機関であれば、審査のハードルが高くなるが好条件でお金を貸してくれる』ということです。
メガバンク
メガバンクの定義としては、巨大な収益規模や資産を有する銀行の事です。もしくは、一兆ドル以上の総資産を持つ銀行グループのことを指します。
この定義に置き換えると、日本のメガバンクは全部で8行です。
- 三菱UFJフィナンシャルグループ
- 三井住友フィナンシャルグループ
- みずほフィナンシャルグループ
- りそなホールディングス
- 新生銀行
- あおぞら銀行
- ゆうちょ銀行
- SBIホールディングス
日本でも世界でも金融機関の統合再編は進み、各国を代表するような大手銀行は少数に絞られつつあります。
不動産投資の世界でメガバンクとは、三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行、りそな銀行になります。
不動産投資の融資では、メガバンクとの取引が実現できれば、今後の展開も非常に有利に働くことが考えられます。
その理由は、ローン金利が他行(地方銀行・信用金庫など)と比べても低く返済期間も長期で見てもらいやすいという点です。
具体的には、0%台~1%台前半の金利で融資を受けることもあります。
また、一度円滑な取引ができれば、次の融資にも繋がりやすく、良好な関係を構築することができます。
しかしその分、メガバンクとは融資を受けるための条件が非常に厳しいものです。
個人であれば、勤務先や年収、総資産など何かしらの好材料がないと融資を受けることができません。年収2,000万円以上、金融資産3,000万円以上ないと審査を受けることさえ難しいと言われています。
法人の場合は原則、3期分の決算書が必要です。
将来的にメガバンクとの取引を考えている方であれば、属性を高めるための努力と戦略的な取り組みが必要になることを念頭に入れて取り組む必要がありそうです。
地方銀行
メガバンクと比べて規模や知名度は劣りますが、地方銀行も有力な取引先銀行として考えておくべきです。
地方銀行とは、各都道府県に本店を置く地域に特化した銀行です。具体的には横浜銀行、千葉銀行、静岡銀行、池田泉州銀行、関西みらい銀行、福岡銀行、北海道銀行などです。
金利については都市銀行と比べるとやや高くなりますが、1%台後半から融資を受けられる可能性がありますので、十分勝負できるでしょう。
本人属性についても年収は最低700万円以上(1,000万円以上あると望ましい)と言われています。他にも親族などの取引実績などの繋がりによって取引が実現したりしますので、そういったコネは上手く活用するとよいでしょう。
地方銀行は本店または支店が属する地域の不動産にしか融資をしない、といった方針が多くありますので、その銀行の融資方針などはしっかり確認しておくべきです。
また、自宅や職場の近くに支店があるかないかも融資をする上での重要なポイントになりますので、その辺りもしっかりと確認しておく必要があります。
信用金庫・信用組合
続いて信用金庫・信用組合です。
信用金庫・信用組合は銀行とは組織の在り方がやや異なります。
銀行は株式会社になるため、株主の利益が最優先されます。一方で信用金庫とは、地域の住民が利用者・会員となり互いに地域の繁栄を図る相互扶助を目的とした協同組織の金融機関です。利益第一主義ではなく、会員すなわち地域社会の利益が優先されます。
信用組合に関しても、同じく共同組織の金融機関ですが、組合員の相互扶助を目的とし、組合員の経済的地位向上を図ることが目的です。
信金・信組どちらも地域に根ざした金融機関であるため、そのエリアに居住しているか、物件がないと融資を受けることができないので注意が必要です。
初めて不動産投資をする場合は、購入予定物件の近隣にある信用金庫を融資先の候補として入れておきましょう。取引実績のある親族や知人の紹介などを通じて相談することで融資を受けられる可能性は上がります。少なくとも、親身になって前向きに相談してくれる場合が多いので、積極的に活用することをおすすめします。
ノンバンク
ノンバンクとは、預金業務のない金融機関で、消費者金融、信販会社、クレジットカード会社などになります。
不動産投資の融資でよく聞くのが、オリックス銀行、アイフルビジネスファイナンス、三井住友トラストL&Fなどです。
特徴としては審査スピードが早いという点がありますが、銀行や信用金庫・信用組合などと比べると金利がどうしても高くなってしまいます。
目安として、オリックス銀行では2%台の融資も可能(築年数・エリア等条件による)ですが、三井トラストL&Fの場合、総額5,000万円までは金利3.9%、5,000万円を超える融資は2.9%、アイフルビジネスファイナンスの場合は、2.49%~となっています。
いずれも金利が高くリスクが大きいようにも見えますが、それは考え方次第です。
ノンバンクを利用するシーンとしては以下のようなケースが考えられます。
- 地方銀行や信用金庫などで全ての審査に落ちてしまった場合
- 審査スピードが必要な場合
- 物件に対して金融機関の融資が下りない場合
ノンバンクを活用した不動産投資は、少々難易度が高い投資です。
一般的には公表されていませんが、再建築不可、築古などの資産性が低い不動産への投資に活用できる場合があります。
イールドギャップを確保できるのであれば、「利回りが高い築古物件などをノンバンクを通じて購入し返済していく」といったやり方もありますが、上級者向けのスキームになります。
最初の取引では、余程のことがない限りノンバンクの利用は避けましょう。
政策金融公庫
最後に政策金融公庫についてです。これまでの金融機関が民間の金融機関なのに対して、政策金融公庫は政府系金融機関になります。
これから不動産投資をスタートする方は、最初に政策金融公庫に行くことをおすすめします。政策金融公庫もまた、初めて不動産投資をする方には強い味方になります。
政策金融公庫で融資を受けるメリットは以下の通りです。
- 固定金利で借りられる
- 女性や35歳未満、55歳以上でこれから事業を始める人は優遇される
- 様々な属性の方に対応
政策金融公庫では、固定金利で低金利のローンを組むことができます。これが政策金融公庫で融資を受ける最大のメリットだと言えます。
銀行の融資でも変動金利から固定金利に変更することは可能ですが、その分金利が高くなってしまいます。その点で、政策金融公庫は最初から固定金利である上の金利が低いのが最大の特徴なのです。
政策金融公庫の金利は、1.5%~2%を目安に考えておいて下さい。
一般的に、借りやすさと金利は反比例します。これが融資を行う上での常識なのですが、政策金融公庫だけはその枠に当てはまらないのです。
また、政策金融公庫では、不動産投資における利回りを重視する傾向があるようです。これは、キャッシュフロー経営による事業の継続性を重視していることがうかがえます。
つまり、築浅の低利回り物件よりも、築古の高利回り物件が好まれ、事業のキャッシュフローを重視するのでしょう。
一方でデメリットもあるので注意が必要です。
- 借入期間が短い
- 融資限度額が少ない
借入期間については、10年または15年です。
不動産投資の期間としては短く、利回りが高い物件でなければ、このような短い期間で回していくのは厳しいでしょう。そのため、購入時に自己資金をある程度入れるか、自己資金を加えながら返済を行っていくケースが多いようです。
融資限度額についても、最大で7,200万円です。そのため、大型物件を購入することはできません。億単位以上の大型物件を購入する場合は、民間の金融機関に相談するようにしましょう。
政策金融公庫で融資を受ける場合の注意点
最後に一点だけ注意があります。
政策金融公庫では「築古物件のようなキャッシュフローが出やすい物件が好まれる」とお伝えしました。これは政策金融公庫が不動産投資に対して融資するのではなく、不動産賃貸業に対して融資をしているということです。
キャッシュフローを重視する経営に対して融資をするということで、他の金融機関とは融資姿勢が大きく変わってきます。
そこで、借り入れ目的や事業計画書には「不動産賃貸業」というキーワードを使うようにします。間違っても面談時において”売却益を狙うような発言”をしてはいけません。
金融機関を味方につけて上手に活用する
不動産投資とは、非常に大きな金額が動く投資です。
他の投資と異なり、金融機関からお金を借りて収益を上げることができ、それを上手に活用していかなければなりません。
金融機関にも様々な種類があり、物件の規模や業歴などに応じて上手に使い分ける必要があります。
不動産投資にとって、金融機関とは『命綱』のようなものであり、上手に活用することで事業を大きくすることが可能になるのです。
そのためにもまずは、金融機関の特徴や融資方針を知ることから始めましょう。