年金の構造と支給開始年齢の高齢化問題についてポイントを整理します
私たちの老後の生活資金は国から支給されてる年金をベースに考られ、多くの人の老後生活に欠かすことのできないとなっています。
現在、この年金制度については大きな転換期を迎えようとしています。改めて、制度を確認して今、どのような状況なのかを確認する必要がありそうです。
年金の3階立て構造について
日本の年金制度は3階建て構造になっています。
1階分は、20歳以上60歳未満の方が加入する国民年金、2階部分は会社員などが加入する厚生年金です。また、年金には3階部分も存在しており、これを企業年金や確定拠出年金と呼びます。
企業年金は、ざっくりいうと、企業独自で上乗せ給付をする性質のもの。確定拠出年金は会社や個人が掛け金を拠出して運用するものとなります。
しかしながら、現在日本の公的年金を取り巻く環境が大きく変わってきていて、私たちの資産形成においても大きな影響を及ぼそうとしているのです。
年金の受給開始年齢について
現在の年金制度では、年金の受給開始年齢は段階を経ながら高齢化しています。
下記の図をご確認下さい。これは、生年月日別に見た年金の受給開始年齢の比較になります。
この表を見ると、受給開始年齢の高齢化が進んでいて、男性では昭和36年4月2日生まれ以降、女性では昭和41年4月2日生まれ以降の方は、厚生年金の受給開始年齢も65歳~となっているのがわかります。
国民年金については、受給開始年齢は65歳からでしたが、厚生年金部分の受給開始年齢が後ろ倒しになってきているのです。我々、現役世代に関しては、さほど気にならないかもしれませんが、男性では59歳以下の方、女性では54歳以下の方に関しては、厚生年金に関しても65歳からの支給となります。
なぜ支給開始年齢が高齢化するのか?
年金の受給開始年齢は、高齢化が進んでいます。現在は65歳から受給開始で70歳まで遅らせるような議論も進んでいる状況です。
どうして、このように受給開始年齢が遅れているのでしょう。
それは、日本の年金制度と大きく関係しています。日本の年金制度は、賦課方式という方法を採用しています。賦課方式とは簡単に言うと、現役世代が年金受給者の年金を負担するという制度です。
ご存知の通り、現在の日本は高齢化社会です。賦課方式を採用している以上、高齢者の割合が高くなることで、一人あたりの現役世代が負担が大きくなるため、受給開始年齢を引き上げることで、負担を軽減していくしかないのです。
現時点で少子高齢化問題が解決する兆しはありません。このままの状態が進むと2060年には、1.4人で一人の高齢者を支えていく時代になると予想されています。現役世代の負担が大きくなる一方で、高齢者に対しても可能な限り負担をしていただく必要性がありそうです。
年金受給の繰り上げと繰り下げ
年金受給開始年齢が高齢化している中、私たちは個別の対応を取ることもできます。年金の受給開始年齢は、原則65歳~となっていますが、前後5年に渡り「繰り上げ」「繰り下げ」の対応を取ることもできるのです。
『繰り上げ』については、1ヶ月単位で実施することができます。もちろん、通常よりも早く支給されてるというインセンティブが適用されますので、その分減額されてしまいます。具体的には、本来の年金額から繰り上げ月数0.5%が減額されます。
上限基幹は最大60ヶ月で30%の減額となります。
減額率 = 0.5% × (繰り上げ請求月から65歳になる月の前月までの月数)
一方で『繰り下げ』についても1ヶ月単位で行えます。本来の年金額から繰り下げ月数、1ヶ月当たり0.7%が増額されます(上限は60月、最大42%増額)。
増額率 = 0.7% × (65歳に達した月から繰下げ申出月の前月までの月数)
数字を見てもお分かりの通り、繰り上げることのデメリットよりも、繰り下げることによるメリットの方が大きくなっています。
そこまでのメリットを打ち出してまで”繰り下げを推奨している”ということは、現在の年金収入と運用状況では非常に厳しい状況であるということが予測できます。
さらに、受給開始年齢を70歳にして、繰り下げを推奨するような議論も実施されており、いよいよ遠近制度についても大幅な見直しが必要な時期に差し迫っているのではないかと思われます。
制度を上手に活用して、資産運用に変えてしまう
繰り返しになりますが、年金の受給開始年齢を遅らせることでのメリットは非常に大きいと想います。
老後の資金状況にもよりますが運用などを通じて、資産が確保できているのであれば支給開始年齢は遅らせてもいいのかなと想います。