不動産特定共同事業とJ-REITの違い | それぞれのメリット・デメリットとは?

不動産投資に少しでも興味を持っている方であれば、J-REIT(ジェーリート)というキーワードを一度は聞いたことがあると思います。

ですが、J-REITに関して「いまいち仕組みが分からない」という方も多いと認識しています。

今回は、不動産投資の種類の一つである『J-REIT』について解説すると同時に、最近話題の不動産特定共同事業との違いやメリット・デメリットについて解説していきます。

J-REIT(ジェーリート)とは

そもそもREITとは何を意味するのでしょうか。REITとは(Real Estate Investment Trust)の頭文字を取ったもので、日本語に直訳すると『不動産投資信託』の意味になります。

J-REITとは、Japanの「J」を取ったもので、日本の不動産投資信託ということになります。以降、このJ-REITについて話をしていきます。

お金を集めて不動産に投資する仕組み

J-REITの仕組みは、簡単にまとめると『一般投資家から資金を集めて複数の不動産を購入して運営することで得た利益を配当として分配する』ことになります。

集めた資金は、オフィスビルや商業施設、マンション、物流倉庫などの購入に充てられます。このように不動産に投資され、そこで得た賃料収入や売却益を投資家に分配するため、不動産投資と勘違いされることがよくありますが、投資信託の一種になります。

J-REITは上場している

J-REITへの投資は証券取引所を通じて行うことができます。このことからも分かる通り、J-REITへの投資は不動産に対して投資をするのではなく、不動産投資法人に対して行う投資ということになります。

これがJ-REITの大きな特徴の一つです。

J-REITそのものが上場しているため、証券口座さえ開設していれば、いつでも誰でもJ-REITに投資することができるのです。

J-REITの特徴について

J-REITの特徴について探っていきましょう。

上の図を見てもらうと一目瞭然ですが、不動産投資法人は、投資家から集めたお金で不動産を運用し、投資家はそれに対する配当を受け取ったり、時価の上昇によって資産価値を向上させ、その売却益によって利益を得たりします。

実際にJ-REITの特徴について深堀していきます。

J-REITのメリット

ここでは、J-REITのメリットは以下の5つに定義します。

  1. 少額から投資ができる
  2. 分散投資
  3. プロによる運用
  4. 高い流動性
  5. 高い分配率

1つ目の「少額から投資ができる」についてですが、J-REIT銘柄への投資は、一単元から可能です。通常、日本の証券市場では、個別銘柄への投資は100単元単位での購入になります。例えば、株価チェックをして、トヨタ自動車の株価が8,743円だった場合は、100単元で874,300円が最低購入金額になるのです。

一方で、J-REITの場合は、購入単位が1単元~になりますので、銘柄によっては、数万円台といった金額からスタートすることができます。この手軽さが一つのメリットであることは言うまでもありません。

2つ目の「分散投資」については、多くの投資家から資金を集めて運用するため、複数の不動産への投資が可能にあります。一つのJ-REIT銘柄に出資すること自体が、複数の不動産に投資していることと同じ意味を持つのです。当たり前ですが、個人投資家が複数の不動産に投資をしようと思ったら、莫大な金額が必要になります。

3つ目の「プロによる運用」については、専門のファンドマネージャーが多角的かつ豊富な知見をベースに運用してくれます。それに加えて、様々な管理業務を省けるといったメリットもあります。

4つ目の「高い流動性」についてですが、J-REITそのものが証券市場に上場している銘柄になりますので、いつでも自由に売買することができます。これにより、資金の流動性が担保されるのです。

5つ目の「高い分配率」についてですが、不動産投資法人は、当期利益の90%超を投資家に分配すること等で税金が免除される仕組みになっているため、利益のほとんどを投資家に分配する仕組みが成立するのです。この分配率によって、多くの投資家が出資し、数の原理が成立することになります。

J-REITのデメリット

これまでの内容では、J-REITには多くのメリットがあり、積極的に投資しようとお考えになる方が多いと思いますが、デメリットも存在します。

デメリットは大きく分けて3つです。

  1. 相場変動が激しい
  2. 不動産投資のリスクを継承する
  3. 経済情勢の影響を受けやすい

1つ目の「相場変動が激しい」について、これがJ-REITの最大のデメリットになると私は思います。

例えば、J-REIT銘柄の日本ビルファンドを例にして月足を見てみると、2020年1月の高値は890,000円でした。そして、コロナウイルスが顕在化し始めた2020年4月には608,000円の安値を付けて、その後2020年10月には522,000円の安値を付けています。そして、2021年5月現在、722,000円の高値を付けているといった状況です。

このように、経済状況や世界情勢に大きく影響するのがJ-REITです。一般的な不動産投資の世界ではこのような値動きは、まず見られません。J-REITは現物不動産投資と比較して、ボラティリティの高い投資商品なのです。

2つ目の「不動産投資のリスクを継承する」については、投資先が不動産である以上、自然災害や天災によるリスクと隣り合わせであることを理解しておかなければなりません。

いざ、地震や自然災害が発生した場合、J-REITもその影響をモロに受けてしまい、価格に直結してしまいます。

3つ目の「経済情勢の影響を受けやすい」については、リーマンショックやコロナショックといった経済的な打撃を受けるとその煽りを食う形で相場に影響します。不動産投資は不況に強いと言われていますが、J-REITには、住宅型以外にもオフィス特化型や物流特化型、商業施設特化型、ホテル特化型、複合型(異なる2つの分野)、統合型(3つ以上の分野)などがあり、必ずしも不況に強いというわけではないのです。

さらに、リーマンショック時には、複数のJ-REITが倒産し上場廃止になった事例もありました。また、不動産投資法人そのものが証券取引所の上場廃止基準に該当すれば、上場廃止になってしまうケースもあります。

この点は、現物不動産投資にはないリスクであり、気を使わなければならない点になります。

不動産特定共同事業との違いについて

次に、不動産特定共同事業との違いについてです。

不動産特定共同事業とは、実物不動産を小口化して複数の投資家に販売する共同で運営する事業のことを言います。

『少額から不動産投資ができる』という局面においては、J-REITと酷似していますが、その性質は全く異なります。

なお、不動産特定共同事業については、以前書かせていただいた記事にも纏まっていますのでそちらもぜひご確認下さい。

不動産特定共同事業の特徴

不動産特定共同事業は、現物不動産を商品とする不動産投資を小口化した商品に対して出資をします。

商品は市場に公開されていないため、J-REITのように相場変動はほとんどありません。

相場変動がほとんどないというメリットがある反面、市場に公開されていない分、流動性に欠けるというデメリットもあります。多くの不動産特定共同事業の投資商品は半年~3年くらいの運用期間が設けられ、その期間内で運用が行われるのです。

投資先は不動産そのものになるため、様々な保証などを個別に柔軟に加えることができます。

J-REIT不動産特定共同事業
投資先不動産投資法人不動産
店頭公開ありなし
流動性高い低い
相場変動高い低い
期間1日~半年~3年程度
出資額数万円~(時価)1万円~
景気変動受けやすい受けにくい
天災リスクありあり
J-REITと不動産特定共同事業の違い

結局どちらが優れているの?

これまで、J-REITの特徴を中心に、よく誤解される不動産特定共同事業との違いについて解説してきましたが、「結局のところどちらが優れていて、どちらに投資するのがお得なのか?」という疑問について、明確な答えが見つかっていません。。。

正直、最終的には好みの問題であったり、信頼できる投資先であるか、ということになるのですが、私個人としては、以下の考え方をベースに判断していただきたいと考えています。

それは、金融庁が提言する『長期・積立・分散』投資の効果についての考え方です。

J-REITのメリットや特徴に、1日単位で投資ができ、資金の流動性が高いという点が挙げられています。

これは一見、大きなメリットであると感じられますが、投資という枠組みの中ではあまり大きな意味を持たないと考えています。なぜなら『長期・積立・分散』の長期の部分が抜け落ちているからです。

この原理原則の中では、1日単位の投資ができることと資金の流動性が高いことは、意味を成しません。

もしあなたが、資金の流動性を気にするのであれば、自己資金に対して投資比率が高すぎるのではないかと心配してしまいます。投資を行うのであれば、必要な現預金を持ったうえで、じっくりと投資をしてみてはいかがでしょうか。

J-REITにしても不動産特定共同事業にしても、不動産投資の違った形として魅力ある投資商品です。

それぞれの特徴をしっかりと把握していただき、J-REITや不動産特定共同事業に対して積極的にチャレンジしていただきたいと願っています。