公的年金は『積立方式』ではない!『積立』や『運用』は別の手段で

今回は、日本の年金制度について改めて考える機会とします。

日本の年金制度がどのようになっているかをご存知でしょうか。多くの方が日本の公的年金の制度について誤解しているように感じられますので、今一度整理してみましょう。

公的年金に関する誤解

あなたは、公的年金は『積立方式』であると誤解していませんか?実は私も最近まで誤解をしていた人間の一人でした。

誤解していたというよりも、興味がなかったというのが正しいのかもしれません。老後のことや生活のことを色々と考えているうちに、公的年金制度について大きな誤解をしていたのです。

このような年金に関する愚痴を聞いたことはありませんか?

年金に関する誤解については、日々私たちが耳にする「公的年金に関する愚痴」からも垣間見えます。

毎月年金払っているけど、支払う額より受け取る金額の方が少ないんじゃないの?

年金の受給開始年齢が遅れたら、完全に赤字じゃん。。。

こんなセリフを一度や二度は聞いたことがあるでしょう。

考え方は人それぞれですが、そもそも日本の年金制度は「積立方式」ではなく「賦課方式」になりますので、このような考え方はナンセンスです。

ちなみに、「賦課方式」とは、現役世代が支払う年金を受給世代が受け取るという考え方になります。ですので、問題の本質は少子高齢化問題やGDPの成長率の鈍化による経済停滞による所得が上がらない点にあると思います。

年金が破綻するのではないか?という話について

2020年7月3日、以下のようなニュースが流れました。

「年金運用 新型コロナで過去最大の17.7兆円の赤字」――。公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は7月3日、2020年1~3月期の運用赤字が、四半期として過去最大の約17.7兆円となったことを発表した。

GPIF、1―3月期は赤字運用17.7兆円 四半期ベースで最大に

新型コロナウイルス拡大による企業の株安が響いた結果だが、衝撃的な赤字額に多くのメディアがこぞって冒頭のような見出しで報じました。

確かに、四半期で17.7兆円の赤字はインパクトがある見出しで、不安を煽るには絶好の対象です。これ自体は事実として受け止める必要がありますが、ミスリードというか赤字額だけを誇張しているような気がしてならないのです。

もう少し、具体的に見ていきましょう。

あなたはGPIFの運用資産額と累積損益をご存知でしょうか?

確かに、17.7兆円の赤字は強烈です。コロナウイルスによって世界的なパンデミックが起こっている以上、このような結果になるのは当然ですが、部分的な数字を抜き取って不安を煽っているとしか思えません。

「このようなリスクを想定しておけ」と思われる方もいますが、今回のコロナウイルスのリスクを想定できていたのであれば、世の中こんなに混乱していません。

それよりも、あなたはGPIFの運用資産額と累積損益をご存知でしょうか?ここの数字を見ていただくことで少しは安心するのではないでしょうか。

2019年10月-12月期までの累積収益とその時点での資産残高を確認してみると、累積収益は、75兆2449億円、運用資産残高は168兆9897億円です。

つまり、累積収益が57.5兆円運用資産残高が151.2兆円下がったことになります。

この四半期だけを見てしまうと、大丈夫か!?と思ってしまいがちですが、GPIFは世界最大の機関投資家であり超頭脳集団です。既に、次の手は打っていました。

実際に2020年4月-6月期はどうだったのか確認していきます。

GPIFのウェブサイトの「2020年度第1四半期運用実績」を確認すると、収益額は+12.4兆円で、これにより累積収益は70兆円運用資産残高は162.9兆円に戻っています。

2001年度以降の累積収益/GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)より

ちなみに、この情報に関する記事は17.7兆円の赤字を出した時と比較して、控えめでした。情報操作って恐いですね。。。(笑)

年金の支給額の内訳について

では、実際に私たちが支払っている年金はどのように高齢者に支払われているのでしょうか。

やや古いデータですが、2018年のデータを元に給付額とその財源について見てみます。

2018年度予算で給付総額は55.1兆円(厚生年金と国民年金)です。そのための財源の約7割(38.5兆円)は現役世代からの保険料収入で賄っています。さらに2割強(12.7兆円)は税金(国庫負担)を投入しています。それでもなお、3.9兆円足りません。

この不足分3.9兆円は年金積立金から賄っています。

年金積立金とは、[現役世代の支払額>高齢者の受給額]となった時に、余る財源を運用に回すことで、現役世代の負担を減らすためのものです。なので上手に運用しながら不足分を賄っているということになります。

この辺りの実績については、別の機会で詳しく記事にしたいと思います。

公的年金は積立ではない

これまでの説明で、私たちが払っている公的年金は「積立ではない」ということがご理解いただけたかと思います。

年金は積立ではありませんし、現在高齢者が支給されている年金は、現役世代が支払っている年金の一部なのです。税金で賄うのは別ですが、それとは別に上手に運用をしてくれているのも事実なのです。

現役世代の老後は厳しいことが予想される・・・

ただし、このままでは私たち現役世代が年金受給者になる時も厳しい現実が待ってることには変わりありません。

少子高齢化の子供が大人になり、私たち現役世代が年金受給者になる時にはどうなってるのでしょうか。。。

もしかしたら、今以上にリスクの高い運用で、積立金を回さなければならないかもしれませんし、現在の子供世代が支払う年金額が相当高いものになるかもしれません。

やはり年金はアテにならない?

ここまで書いて、思ったことが2つあります。

1つ目は、一人ひとりの自助努力が今後ますます大切になるということ

そして2つ目が、投資などによる資産運用を積極的に行なうことで、経済を活性化させ、かつ自分自身も資産を増やしていくというサイクルを個人レベルで確立することです。

貯蓄を増やすことも大切ですが、年金運用について調べていくなかで、資産運用の重要性を再認識し、私たちの家計はその縮図なのだと感じました。

貯蓄に走ったところで、お金の循環がストップしている状態は非常に危険な状態であるということです。少額からでも、まずは始めることが大切なのだと思います。

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