不動産クラウドファンディングの出資者はどのようなリスク回避策によって守られているのか?その保証とは?

不動産クラウドファンディングのリスク回避策について考えていきましょう。

各社、不動産クラウドファンディングで出資者を募集していますが、これらの商品はどのようにしてリスクを回避しているのでしょうか。

投資を検討されている方にとっては、とても重要な要素ですよね。

具体的な事例を踏まえながら解説していきます。

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劣後出資によるリスク回避

劣後出資によるリスク回避

最も多く、ほとんどの事業者がおこなっている出資者保護のための施策として『劣後出資』があげられます。

『劣後出資』とは、匿名組合契約における出資の区分のひとつです。劣後出資者は利益のうちから優先出資者が得られた分配を控除した後に残額があれば受け取ることができます。損失についてはその逆で、優先出資者よりも先に被ることになります。

つまり、事業における利益は最後に受け取り、損失は先に被るのが『劣後出資者』ということになるのです。

利益を受け取ったり、損失を被る際の割合については、総出資額に対する劣後出資額の割合とイコールになります。

具体的な例を交えて説明します。

優先出資枠が80%、劣後出資枠が20%の不動産クラウドファンディングの商品に出資した場合、不動産の評価下落が20%までであれば、優先出資者の出資元本は保証されます。

また、事業としての利益が想定通り出なかった場合においても、配当を受け取れなくなるのは劣後出資者からで、劣後出資枠20%分の下落までは、出資者の配当は予定通り保証されることになります。

実施問題、劣後出資制度は多くの不動産クラウドファンディングで導入されている出資者保護スキームです。不動産クラウドファンディングに何度も投資をされている投資家にとっては、目新しいスキームではありません。

これから不動産クラウドファンディングへの出資を検討されている方は、出資者のリスク回避策の一つである『劣後出資』について、ぜひ覚えていただきたいと思います。

マスターリース契約による賃料保証

マスターリース契約による賃料保証

不動産クラウドファンディングの収支の源は、投資先の不動産に入居しているテナントからの賃料収入です。

この賃料収入が途絶えるということは投資家にとっては致命的です。

その理由として、賃料収入が入らないということは、即ち事業収入が減少してしまい最悪の場合ゼロになってしまうからです。

収入は減少しても費用は毎月発生しますので、不動産投資の利回りが低下してしまいます。当然、新たな入居者を募集するわけですが、それにしても最低でも2‐3ヶ月はかかるため、その間の収入は途絶えてしまうわけです。

事業として見たときに、このようなリスクがあるのは当然ですが、不動産クラウドファンディングとしての投資家を募集する投資商品としては魅力に欠けます。というよりも、これでは”投資に値しない”と考えるのが一般的だと私は考えます。

そこで、このようなリスクを回避し、投資家に安心して出資していただくための施策が『マスターリース契約』です。

『マスターリース契約』は、テナントと不動産所有者(不動産クラウドファンディングの場合は事業者であることがほとんど)の間に第三者(賃料保証会社)を挟みます。

テナントと第三者がサブリース契約、第三者と所有者がマスターリース契約を締結するというイメージです。

[テナント⇔"賃料保証会社"⇔事業者⇔投資家]このような契約の流れになります。

これにより、テナントが退去した場合でも第三者が契約期間内における賃料を保証するため、事業者は退去リスクを恐れることなく事業を展開できますし、投資家も安心して投資をすることができる仕組みになっています。

買取保証を付与することで流動性と出資金の毀損を防ぐ

買取保証について

続いて買取保証についてです。

買取保証とは、事業者が所有する投資用不動産の価値が毀損した際に、その不動産の流動性と投資家の出資金が毀損するリスクを抑えることができる仕組みです。

具体的には、買取保証会社がその事業で取得する不動産クラウドファンディング商品に対して、買取保証を付与する形となります。

不動産クラウドファンディングの買取保証業務では、株式会社日本保証が有名です。

このような保証を付与することは、投資家にとっての安心材料にもなります。

不動産クラウドファンディングへの投資を検討している場合は、こういった保証制度の有無についても着目するとよいのではないでしょうか。

倒産隔離は特例事業に限定される点に注意

倒産隔離は特例事業に限定される点に注意

不動産クラウドファンディングへの出資を検討されている投資家であれば、ぜひ覚えておきたい仕組みが『倒産隔離』です。

倒産隔離とは、その企業が倒産した場合でも、その企業が所有している資産には影響が及ばないように資産を分別管理することを言います。不動産クラウドファンディングであれば、投資家からの出資金であったり、その不動産が該当します。

不動産クラウドファンディングは、不動産特定共同事業法に準拠しています。

不動産特定共同事業には、倒産隔離できない1号事業と倒産隔離されたSPC方式(SPC方式とは特定目的法人を設立する方式のことをいう)による特例事業があります。

不動産特定共同事業を営むためには、原則として宅地建物取引業の免許を受けている法人であることや一定額以上の資本金(1号事業の場合は1億円以上)を有していることなど厳格な基準をクリアしていることが条件になります。

この点を見ても、事業者の健全性は一定以上の基準で担保される形にはなりますが、倒産隔離という最大のリスクヘッジができていないのが実情です。1号事業の場合は、倒産隔離は行いませんので、万が一事業者が倒産した場合は投資家の利益を損なってしまいます。

リスクとその対策をしっかり把握して投資判断することが大切です

リスクとその対策をしっかり把握して投資判断することが大切です

月並みな言葉ですが、投資にはリスクが付き物だということを改めて確認しておきます。

元本保証、利回り保証といった保証に関しては出資法で禁じられているため、そのようなオイシイ話は存在しないという現実を知っておく必要があります。(もし、そのような金融商品の提案を受けた場合は迂闊に飛びついてはいけません)

そういったリスクについては、事前にきちん投資家自身が把握した上で投資判断をする必要があるのです。

当然、不動産クラウドファンディングの商品にも様々なリスクが伴いますが、事業者はこれまでお伝えしてきたような対策が施されていて、出資者保護に努めているという現実があることを、是非知っておいていただきたいのです。