匿名組合契約と任意組合契約 | 不動産クラウドファンディングの契約形態についての特徴を解説します
不動産クラウドファンディング(または不動産特定共同事業)の契約形態には、大きく2種類(厳密には3種類)の契約形態が存在します。それぞれの契約形態には固有の特徴があり、メリット・デメリットがあるので解説していきましょう。
本記事では、『匿名組合契約』と『任意組合契約』についてご説明した後、投資家にとって、どのような違いがあるのかを確認していきます。さらに、『匿名組合契約』『任意組合契約』に適している投資家のタイプについても解説していきましょう。
Contents
匿名組合契約とはどのような契約なのか?
『匿名組合契約』とはどのような契約なのでしょうか。
匿名組合契約とは、商法535条に規定されている契約形態のことで、不特定多数の出資者が事業者の事業に対して出資してそこから生じる利益を出資割合に対して分配金として受け取るような契約の仕組みです。
不動産クラウドファンディングでは、事業者と出資者の間で匿名組合型の不動産特定共同事業契約の締結をしますが、不動産そのものの所有権は事業者が持つ点が一つの特徴です。
投資家にとっての匿名組合契約のメリットとは?
投資家が不動産クラウドファンディング(または不動産特定共同事業)で匿名組合型のファンドに出資するメリットとしては、その”手軽さ”に集約されます。
不動産クラウドファンディングの多くは、少額の自己資金を複数のファンドに分散させながら出資する資産運用を最大の目的としています。つまり、自分自身のお金を中長期的に効率よく増やすことを目指しているのです。
そのため、投資家の視点から見てみれば、余計な手間や負担はかけたくないというのが正直なところなのです。
さらに、サービス的な特徴として、万が一不動産の評価等が下がった場合にその評価下落分を事業者が優先的に被る劣後出資枠の充実、空室リスク対策として導入されるようなマスターリース契約などを導入するなど、出資者に対して手厚い保証がついている点も大きなメリットとなります。
任意組合契約とはどのような契約なのか?
一方で『任意組合契約』についても考えていきます。
任意組合契約とは、出資者が事業者と同等の扱いになり、共同で事業を営む契約になります。任意組合では、その固有の財産は組合員の共有持ち分になりますが、債務についても組合員に帰属するため、各組合員は連帯して弁済義務を負うことになります。
不動産クラウドファンディングでは、出資割合に応じて不動産を共有持ち分として”所有する”ことになります。
投資家にとっての任意組合契約のメリットとは?
任意組合型のメリットとしては、持分形式でありながらも不動産を所有できるという点です。
このメリットを享受できるのが一般的に資産家と呼ばれるようなレイヤーの投資家で、不動産を所有することに税金対策が可能になります。
さらに『不動産の所有×不動産クラウドファンディング(または不動産特定共同事業)』によって、相続税対策などの税金対策はしたいけど、なかなか一等地の不動産は購入できない。といった投資家に対して、購入できる範囲で持分提供をしているのです。
税の圧縮効果が大きいと言われている、都心一等地の不動産を所有できるという意味で、任意組合型の不動産クラウドファンディングを利用することは、このような投資家にとって、非常に大きなメリットがあるのです。
不動産クラウドファンディングでは匿名組合型が圧倒的に多い
不動産クラウドファンディング(または不動産特定共同事業)で組成されたファンド商品の多くは『匿名組合型』です。その理由としてはやはり、不動産小口化という商品特性上、共有持ち分にすることによる管理面が煩雑になるということだと私は思います。
共有持ち分にすれば、不動産登記にも一人ひとりの情報を載せる必要がありますし、その分の登記費用も発生します。
その点『匿名組合契約』では、不動産の所有権は事業者に帰属しますので、そういった面倒な手間も発生しないのです。
不動産を小口化して少額から出資できるようにする、というメリットを最大限享受できるのは、この『匿名組合契約』になるのです。
匿名組合型の不動産クラウドファンディングは利回りが高い商品が多い
『投資利回り』を見比べてみても『任意組合型』と比べて『匿名組合型』の方が、高利回りの商品を扱っている傾向にあります。
これは、任意組合型の商品が税金対策であるという理由からも読み取ることができます。税金対策になるような不動産とはどのような不動産なのか?と考えた場合、該当する不動産は、都心の一等地にあるものが多いとお伝えしてきました。
そのため必然的に【都心の不動産=全体的に利回りが低い】不動産が多くなるのです。
繰り返しになりますが、全ての投資家が不動産投資に対して利回りの高さを求めているわけではありません。場合によっては、税金対策の要素を求めているケースもあります。一概に高利回りの商品がよいという事はありません。
『匿名組合契約』『任意組合契約』に適している投資家とは?
これまでの流れをまとめると、不動産クラウドファンディング(または不動産特定共同事業)に投資する際に『匿名組合型』『任意組合型』にそれぞれ適している投資家は異なるということがわかります。
『匿名組合型』に適している投資家とは?
『匿名組合型』に適している投資家は、自分のお金を増やすような資産運用をするタイプになります。
少額から自己資金を積立てるように、小口化された不動産を購入し3%~6%程度の利回りで運用をしていきます。これにより低位的な配当を受け取ることができるため、収入の柱を構築することができます。
適正な年齢層というのは、特にありませんが、投資の原理原則である『長期・積立・分散』をベースに考えた場合には、できる限り早い段階から投資をスタートすることが望ましいのは間違いありません。
『任意組合型』に適している投資家とは?
『任意組合型』に適している投資家は、自分のお金を守るような運用をするタイプになります。
このタイプは、いわゆる”お金持ち”と呼ばれるタイプで、資産を増やしつつも所得税や相続税などで出ていくお金を減らしたいと考えている方が多いです。
実際に不動産を所有することができる『任意組合型』の不動産クラウドファンディング(または不動産特定共同事業)に出資することで、自身の資産を十分に守ることができるのです。
自分自身がどちらのタイプなのかを見極めて適切な商品に投資をすること
あなたは、どちらのタイプでしょうか?一概に投資商品といっても、全ての商品が”あなたの目的に沿ったもの”であるとは限りません。この点については、不動産クラウドファンディングに限らず、他の金融商品にも該当します。
不動産クラウドファンディング(または不動産特定共同事業)への出資を考えているのであれば、『匿名組合型』『任意組合型』に関する違いを理解して、その判断材料にしていただきたいと考えています。