不動産特定共同事業法の改正で何が変わるのか?
最近、不動産関連のニュースや紙面を見ていると、「不動産特定共同事業法」という言葉をよく目にします。
そもそも、「不動産特定共同事業法」とはどのような法律なのか?ということを理解しておきましょう。
不動産特定共同事業法とは
不動産特定共同事業法(以下:不特法とする)とは 、現物不動産を資産としたファンドの運用を規制する法律です。
不動産特定共同事業とは、匿名組合契約によって投資家から出資を受け、都内のビルを購入します。そして、その賃貸・売買などで生じた利益を投資家に配当として分配します。
出資を受け、不動産を購入し、事業を運営し、利益を分配する主体というとピンとくるかもしれません。
しかし、このような事業を行なう場合には、「不特法」に基づいて、原則的に、不動産特定共同事業の許可を受ける必要があり、一定の条件のもとで手続きを行う許認可制となります。
平成25年の不特法改正
以前の制度では、SPC(特別目的会社)において、不動産特定共同事業を行なうことは困難でした。この点を改善するために、平成25年に、「特例事業」の制度が新たに導入されています。
特例事業とは
特定事業とは、不動産取引などで発生する、収益を投資家に対して分配することを事業として行なうことを指します。
なお、特定事業を行なうにあたり、以下の4つの要件を満たす必要があります。
- 当該事業を専ら行なうことを目的とする法人であること
- 不動産特定共同事業契約に基づき営まれる、不動産取引に係る業務を一つの不動産特定共同事業者(第三号事業者)に委託するものであること
- 不動産特定共同事業契約の締結の勧誘業務を不動産特定共同事業社(第四号事業者)に委託するものであること
- 銀行、信託会社その他不動産に対する投資に係る専門的知識及び経験を有すると認めれれる者として施行規則で定める者又は資本金の額が施行規則で定める金額以上の株式会社(改正法上、「特例投資家」という)、すなわちプロを相手方または事業参加者とする。
不特法改正のポイント
平成25年の法改正のポイントとして、SPCを主体とする現物不動産のファンドを組成・運用が可能になった点がポイントの一つです。
しかし、実際には、制面において減税の範囲が限定的であると同時に、制度面においても柔軟性に欠ける内容で画一的なものであるということで、そこまで普及しなかったのが実情です。
平成29年の不特法改正で不動産投資がより身近に
平成25年改正の課題などを含めて、更にブラッシュアップされたのが29年度改正です。
制度的な課題を図りつつ、現物不動産ファンドの組成・運用が可能な範囲を拡大し、クラウドファンディングを可能としました。
これは、不特法による、「不動産特定共同事業法」をもっと積極的に活用し活性化させるために、平成29年6月2日に改正されました。
今回の改正による不特法を「改正法」と呼びます。
平成29年改正法への期待
改正法においては、事業者と投資家ともに裾野が広がり、不動産投資がより一般的になることが期待されます。
ここでは主なポイントを3つ紹介します。
小規模不動産特定共同事業の創設
事業の規制緩和です。特定共同事業者の許可を得るための要件を緩和することで、より多くの事業者の参入を促し、市場を活性化させます。
地方の不動産や商店街、空き家などに対して新たな投資物件としての息吹を与え、地域を活性化させる期待が込められています。
小規模不動産特定共同事業における主な要件を以下の表にまとめました。
小規模不動産特定共同事業者 (小規模第一号事業者) | |
事業者になるための手続き | 主務大臣または都道府県知事による登録 |
資本金 | 1,000万円以上 |
純資産 | 純資産≧(資本金又は出資の額×90/100) |
免許 | 宅地建物取引業 |
投資家から受け取ることができる出資の合計額 | 1億円以下 |
投資家一人あたりの出資額 | 100万円以下(特例投資家については一億円以下) |
クラウドファンディングの活用
今回の法改正で電子取引に関する内容が明文化されています。整える体制については、国土交通省がガイドラインを公表しています。現時点ではクラウドファンディングの参入は多くはありません(2019年6月時点で10社)が、今後大手企業の参入も見込まれており、活性化が期待されます。
新たな投資家層の獲得
開発案件ではない通常の不動産取得に関する投資には、一般投資家の参加も可能です。上述の通り、投資家一人あたりの出資額も100万円以下ということもあり、現物不動産投資への参入障壁も随分低くなりました。
従来の不動産投資の大半は、金融機関からの融資が前提となっていましたが、不特定多数の投資家から小口出資を募集することで、新たな投資家層を獲得し投資意欲を活性化が見込まれます。
それにより、地域の活性化、空き家の再活用などを通じて経済が活性化されるのではないでしょうか。
不動産投資がより身近になり、地域活性化と一人ひとりの資産形成へと繋がる
改正法においては、地域活性化と投資活性化が見込まれると考えます。
少子高齢化は深刻な社会問題となり、地方の過疎化や空き家問題は日に日に大きくなっています。
不動産投資は、一部の機関投資家や高所得者を中心とした投資でしたが、今回の法改正でより多くの方に不動産投資の魅力を知ってもらえるでしょう。
投資家の裾野が広がり、中古不動産への投資を通じて、地域、地方が活性化されることを期待しています。
不動産特定共同事業トモタクへのご相談はこちら